大統領の密使/大統領の晩餐(小林信彦コレクション)
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大統領の密使/大統領の晩餐(小林信彦コレクション)

「天を駆けろ 地にもぐれ 狙った獲物にまっしぐら 奇想天外 痛快無比 抱腹絶倒 珍無類 奇妙 珍妙 奇天連教 世界制覇は もうすぐだ すっこけ ずっこけ がんばろう ビバ ビバ! オヨヨ! ビバ! オヨヨ! 」(『大統領の密使』) 「さってもならんだ菜単に 舌鼓うつ武勇の騎士よ 清湯燕窩 蟹粉魚翅 紅焼海参 八宝果飯 おまけに ダイナマイトが150トン いざ来い オヨヨ大統領 ビバ ビバ オヨヨ! ビバ オヨヨ! 」(『大統領の晩餐』) 〈小林信彦コレクション〉第三弾はオヨヨ大統領シリーズの傑作『大統領の密使』と『大統領の晩餐』のカップリング。単行本の際に収録されていた、挿絵(小林泰彦)も収録しています。


¥1,980
フリースタイル 2019年, 単行本(ソフトカバー) 472頁
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著者: 小林信彦

(1932年12月12日 - )「ヒッチコック・マガジン」創刊から編集長を務めた後、作家として独立。主な作品に、『唐獅子株式会社』『ちはやふる奥の細道』『夢の砦』『東京少年』『うらなり』(菊池寛賞)『日本橋バビロン』など。『日本の喜劇人』(芸術選奨新人賞)『天才伝説 横山やすし』『テレビの黄金時代』『おかしな男 渥美清』ほか、大衆文化に関するエッセイ、コラムも多数。

2019.
10.19Sat

大統領の密使/大統領の晩餐(小林信彦コレクション)

刊行予定が大幅に遅れていたのでもしや出ないのではないかと危ぶんでいた復刻版手持ちの文庫版は紙が変色してカバーもボロボロになりかけているので再刊は有難かった小林泰彦氏の挿絵も収録されているのが嬉しいただなぜか大統領の密使では挿絵があるべきページに配置されていない文庫しか知らないので単行本からしてこの配置だったのかは不明惜しい

十数年ぶりにちゃんと読み返すと平成をまたいで令和に読む昭和 40年代は記憶にあるよりずっと古びた印象だったラジオの深夜放送が若者の娯楽だった時代ロシアはまだソ連の一部でドイツは東西に分かれていて香港は英国の統治下にあった時の流れの速さに頭がくらくらする当時の風俗がふんだんに描かれているのだが若い人にとっては古いカタログを眺めるような感覚かもしれない
とはいえ気を取り直し)、 年配者が昔を懐かしむために読むだけではもったいない小説であることは間違いないハードボイルドとミステリの設定に映画とテレビ番組に音楽や料理まで作者の教養がふんだんに盛り込まれた贅をつくしたユーモア小説であるパロディ化されたキャラクター達がトラブルに巻きこまれオヨヨ大統領などというふざけた名前の悪党と対峙するのだが破茶滅茶な言動でシリアスな状況を突き進むそのバランスと会話のテンポがたまらなく良い

パロディという言葉は小林信彦の本を通じて知った
中学生の私にはいまひとつピンとこない単語だった定義は理解できないまま物語の面白さに夢中になってオヨヨシリーズを読み漁ったハードボイルドやヤクザ映画といった興味のない内容なのに物語にのめり込めたのはパロディが秀逸であったからこそだ
パロディは原典を知っていてこそ楽しめるというのが正論だ原典に関する知識があればより深く理解できる盛り込まれた皮肉にひとりでくすくす笑って優越感にひたれる
知識がなければまず何がパロディ化されたのかもわからないわけだがわからなければそれなりに楽しめる読み方がある物語にうまく欺されることだ
台詞に言い回しに舞台設定になんだかおかしみを感じるということは何かのパロディなのかもしれない背景に別の物語があるのかどんなことがどのように隠されているんだろう
舞台上のコメディに笑いながらパロディ化されたであろう場面を想像するそんな風に読むのがこの小説に合っている読書は手軽な冒険だ
もちろん原典を知りたい欲求もあることはあるいまの時代片手でなんでも検索できるのだから原典となる作品も昔のスターの顔も1分で突き止められるああなるほどねふーんと納得はできるがGoogle に教えてもらった答えでは簡単すぎてドーパミンは出ないゲームで行き詰まって攻略サイトで答えを見るのと同じだ少しばかり賢くなった気がするけどどうせ二,三日で忘れてしまうでもそうやって探しに行くのも冒険のうちだ過去に寄り道するのも悪くないつまりどう読んでも楽しめるとびきりの娯楽小説なのである


学生時代より児童文学を学ぶ。長い休みをはさみつつ創作を続け、2014年より、Webサイト「note」にて作品を公開。代表作に『きゅーのつれづれ』『手品師の弟子』『にんぎょばなし』など。2019年現在『鳥の国のはなし』を連載中。愛読書はダイアン・セッターフィールド『13番目の物語』、谷崎潤一郎『細雪』。好きな作家は小林信彦、庄野英二、イタロ・カルヴィーノ。
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