オープン・シティ
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オープン・シティ

マンハッタンを日ごと彷徨する、若き精神科医。彼が街路で目にした風景は、屈託に満ちたナイジェリアでの幼い日々、ブリュッセルで移民たちに聞いた苦難の物語と共鳴しながら、時代や場所を超えた大きな物語を描き始める――。PEN/ヘミングウェイ賞ほか数々の賞に輝き「ゼーバルトの再来」と讃えられたデビュー長篇。


¥1,881
新潮社 2017年, Kindle版 313頁
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読んだ人:杜 昌彦

オープン・シティ

ハードボイルド小説から物語と謎を抜いたかのような都市と記憶の描写が延々つづく小説退屈な話のはずなのに文章に魅力があってつい読まされるどこまで読んでも主題らしきものが見えず主人公も何がしたいのかどこを目指しているのかさっぱりわからない冒頭の弁解のように散策しているのだといわれたらそれまでなのだがたとえば祖母を探しに出かけたのかと思ったら別にそういうわけでもなく無意味に観光だけして帰ってくるこのままの調子で終わるのかと思いきや終盤で唐突に主人公の性犯罪歴が明かされる都合が悪くなった彼はまったく無関係なインテリ臭いうんちくを語りだすそれまでずっとそうしてきたようにまるで予兆のようなオヤジ狩り被害のエピソードの直後にこの大きな転調が訪れる詩情のように思わされてきたものが突如として禍々しい欺瞞だったかのように思えてくる主人公はアフリカ系米国人としての社会的文脈に従うよう求められることにひたすら困惑しつづけていてその違和感への執拗なこだわりがそれまでは都市の描写やら歴史の記憶やらルーツやら何やらの話であったかのように装われてきたのだけれども実は社会的文脈を理解できないサイコパス特有の感じ方であったかのようにさえ思えてくる精神科医という職業も何かそのことに関連しているのかとまで疑いたくなるそうして結局この小説が何をいいたかったのか何を描いているのかはわからないままだまるでサイコパスの内面のようにこのような読み方を意図して書かれたのかといえばどうもそうではないような気がするこういう人物がこんな内面を生きているそれをただ写真のように記録した話なのだ終盤で唐突に犯罪の話が出てくるあたりも含めてニコルソン・ベイカー中二階を連想したインテリ臭いがそのままには受け取れない奇妙な本

(2017年09月24日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


テジュ・コール
1975年6月27日 -

2011年『オープン・シティ』でPEN/へミングウェイ賞およびローゼンタール賞を受賞、全米批評家協会賞の最終候補。写真家、美術批評家としても活躍中。

テジュ・コールの本