杜 昌彦
シュウ君と悪夢の怪物
得意技は口にチャック! それが宇宙でいちばん賢い犬、シュウ君だ。
転任する先生からもらったぬいぐるみ、シュウ君がしゃべりだした! ノベルは幽霊屋敷の探検中、謎の青い光で気を失った。指名手配犯「人喰らい」を追って地球へやってきた宇宙刑事が、そのときぬいぐるみに取り憑いたのだ。街に拡がる不審者の噂。ついにノベルの周囲にも魔の手が……。シュウ君とノベルは、連れ去られた同級生を救い出せるのか!? ダークでポップな新世紀の児童文学。(2006年作)
第1話: シュウ君登場
シュウ君は三歳だけど、車の免許を持っている。笛も教科書もおしゃれ着も、ベッドや布団も、立派な家さえある。一時は自家用ジェットまで持っていて、しかもそれをなくしてしまった。もらいものが多すぎて、引き出しはいつもいっぱい。ぜ […]
2022年8月19日
第2話: 謎の転校生
早起きしたはずなのに、宇宙生物のせいで遅刻してしまった。 ノベルの教室はなぜかざわめいていた。後ろの戸をそーっと開ける。出欠などとっくに終わっていると覚悟していた。先生はまだ来ていなかった。 「何かあったの?」 「転校 […]
第3話: あいつぐ失踪
遅刻常習犯のノベルには、集団登校は苦痛だった。さすがに二十人も平気で待たせる神経はない。生徒の多い地区なのだ。早起きしないわけにいかなくなった。 今朝の引率は保護者だった。厳しい表情のお母さんと、やけに張り切っているお […]
第4話: シュウ君の嘘
「廃墟で目撃したことは、内緒だ」 「でもよ……」 頑太は不服げだった。ノベルも本当は同じ気持ちだった。 「仕方ありませんよ。頭が変になったと思われます。信じてもらえるわけがないでしょう? 鮎香ちゃんが怪物にさらわれたな […]
第5話: 悪との対決
「どういうことなの」 チカ先生は腕組みして、シュウ君を見下ろした。 「聞いてたでしょ。あなたの話とかなり違うみたいだけど。納得いくように説明してもらいましょうか」 シュウ君はテーブルにぺったり座っていた。ぬいぐるみな […]
第6話: 新しい家族
ベーコンの焼ける匂いで、ノベルは目覚めた。ベッドを降りて、何気なく本棚へ視線をやる。大切なものがそこにあったような気がした。思い出せなかった。パジャマのまま部屋を出た。 脂がフライパンではぜる音を聞いたような気がした。 […]