信子
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信子

大分から上京し大都女学校に赴任した新米教師の信子。初めての東京生活に戸惑い、学校を二分する校長と教頭の勢力争いに巻き込まれ、一筋縄ではない寮の女生徒たちに手を焼きながら、信子は持ち前の度胸と真っ直ぐさで奮闘する。爽快な女版『坊っちゃん』。


¥350
朝日新聞出版 2017年, 文庫 248頁
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読んだ人:杜 昌彦

信子

いやーおもしろかった! 獅子文六は女性を書くのがほんとうにうまいいつもふしぎなのだけれど時代の空気をだれよりも巧みに取り入れながらもどこか距離をおいて眺めているような超越した感じがある時代のモラルから当然のように自由ではないのに同時にそんなことはどうでもいいと思っているかのような自由さ平然と矛盾するのだこの小説の舞台や登場人物たちにしたって恋愛すら罪悪として咎め立てられるような価値観を正義としながらもその正義を説く教師たち自身がどう考えても当時のあるべき女性像とは思えないごくあたりまえの等身大の現代のわれわれとおなじような生身の女たちなのだ印象的なふたりの教え子にしてもあの時代にああいう視点でもって書けるとはそして当時のふつうのひとびとに共感をもって読ませてしまうとはどういうことなんだろう。 『坊ちゃんのやりすぎなくらいのオマージュというか古典のコード進行を借りて現代的な超絶技巧のプレイを聴かされてしまうというか看板の話はなるほどなぁと唸った屋号や筆名をどうしようかと悩んでいたところだったからねやっかいなひとたちに絡まれて筆名は泥まみれになってしまったけれど書くこと自体をやめたからそれは別にかまわない屋号はこのままにしようと腹を決めた十年これでやってきたからね信用も何もないけれど血も汗も想い出も染みついてるわけだあとこの本にしても元ネタの坊ちゃんにしても西部劇のプロットなんだよね型破りな主人公がある土地を訪れてそこの腐敗と闘って去っていくそういう意味では坊ちゃん信子もハメットの赤い収穫と似ている宇垣さんというのがどういう人物か知らなかったので調べて評価を知りなるほどと唸ったうまいね

(2017年08月31日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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獅子文六
1893年7月1日 - 1969年12月13日

日本の作家、演出家。多くの作品が映像化された。1961年にNHKでテレビドラマ化された『娘と私』は、連続テレビ小説の第1作となった。1963年、日本芸術院賞受賞、1964年芸術院会員、1969年文化勲章受章、同時に文化功労者となる。