杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第29回: だれも知らない本

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
01.28Sat

だれも知らない本

現代の出版はストアのアルゴリズムを利用するゲームになりつつあります反射的なクリックを誘発する画面表示で得点を稼ぐゲームです世渡りの技術もまた現実社会のアルゴリズムを利用したゲームであり画面表示と組み合わせたハックによってプレイヤーは高得点を得ますセルフパブリッシングは実情としてその効率を先鋭化したものにすぎずゲームの素養と技術が要求されますそれは読書の本質である孤独や自分自身であることとは相容れません作品ではなくつながり」 「が求められる時代に出版レーベルとして何ができるでしょうか

当レーベルはひらかれたつながりよりは閉じた孤独をめざしますebook よりも扱いが不便なモノであるという点で印刷物に適しているようにも思えますが商業出版の論理とは相容れませんリトルプレスや ZINE は作家性や胸をえぐるような重み痛みといったものよりは都会の美しい若者がカフェで眺めるお洒落な雑貨にふさわしいオンデマンド出版も日本ではやはり同人的な交流の証かソーシャルのつながりで消費されるお洒落雑貨の位置づけのように見えます

Amazon の出版サービスは日本では一部の機能しか使えません埋め込みビューワ Kindle instant previews も印刷版の出版機能正確には連携サービス CreateSpace の一部も日本語には対応していませんそこでほかのサプライヤーを利用することになりますが残念ながらどの業者も一長一短ですインプレスの POD サービス NextPublishing はお金を払って業者に任せるサービスである印象を受けましたまた CreateSpace と異なり ISBN 付与に別途料金を要します追記:別途料金を支払っても自分の出版社名は使えません)。 ISBN を簡便に利用できるのが売りの MyISBN には魅力を感じませんでした

BCCKS は表現力豊かなオーサリング機能が売りでepub と印刷版をほぼ同時に作成できます版下 PDF のダウンロードや転用は不可)。 しかしながら作成した印刷版はe 託販売サービスや密林社を使うか自力で取扱先を開拓するなどしないかぎり集客力のない BCCKS 内でしか販売できませんまた埋め込みビューワには設定方法の解説がありませんPHP や JavaScript の知識が要求されるためサポート対象外だそうですビューワが機能する twitter からの集客を想定しているのでしょうここでもやはり閉じた作品ではなくひらかれたつながり」、 対社会的なゲームの技術が求められます答えは出ません


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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