人間失格
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人間失格

「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。ひとがひととして、ひとと生きる意味を問う、太宰治、捨て身の問題作。

著者:太宰治

(1909年6月19日 - 1948年6月13日) 自殺未遂や薬物中毒を克服し戦前から戦後にかけて多くの作品を発表。没落した華族の女性を主人公にした『斜陽』はベストセラーとなる。その作風から新戯作派、無頼派と称された。

太宰治の本
2011.
11.23Wed

人間失格

読まず嫌いだった。はじめて読んだ。性犯罪被害の話だとは知らなかった。性的虐待を受けて育った男が、そのために人生を駄目にしていく。世間とも女ともうまくやることができない。うまくいくかもしれなかった結婚も、妻子を不幸にするのを畏れてみずから駄目にしてしまう。その後の結婚はうまく行くかに思えたが妻は性犯罪にあう。その場にいあわせながら恐怖のために逃げることしかできない。おなじ経験をしたことのない世間一般の人間である「友人」は、その現場を知らせるだけで平然としている。その結婚も駄目になる。主人公は男たちに断罪され脳病院(事実上、劣悪な牢獄)に入れられる。出てからも実家のはからいで性暴力の被害にあいつづける。這い出ることのかなわぬ人生。何が暴力となりうるかは、孤立の度合いによる。当時の家庭で父親が子どもを殴るのは当たり前だったろう。これだけなら人前でいえることだ。性的虐待も同様に多かったはずだけれども、これは人前でいえない。孤立した子どもはおかしくなる。「おかしい子ども」を封建的な父親は罰するだろう。「世間」も罰するだろう。暴力によって孤立させられた子どもは、二次加害によってさらに断罪され、孤立させられる。性的虐待のサヴァイヴァーが的確に描写されている。もしこの小説が、青春期の普遍的な悩みについての物語として読まれているのなら、それはある種の二次加害でさえありうる。本質を黙殺し、ありがちな悩みに矮小化する行為であるように思える。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。硬質な文体と独創的な物語で知られる。作風はアヴァン・ポップ、スリップストリーム、スペキュレイティブ・フィクションに分類される。2010年から別名義で活動。2013年日本電子出版協会(JEPA )主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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