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母なる夜
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母なる夜

第二次大戦中、ヒトラーの宣伝部員として対米ラジオ放送のキャンペーンを行なった新進劇作家、ハワード・W・キャンベル・ジュニア―はたして彼は、本当に母国アメリカの裏切り者だったのか?戦後15年を経て、ニューヨークはグリニッチヴィレジで隠遁生活を送るキャンベルの脳裡に去来するものは、真面目一方の会社人間の父、アルコール依存症の母、そして何よりも、美しい女優だった妻ヘルガへの想いであった…鬼才ヴォネガットが、たくまざるユーモアとシニカルなアイロニーに満ちたまなざしで、自伝の名を借りて描く、時代の趨勢に弄ばれた一人の知識人の内なる肖像。

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いままさに起きていること

読んだ人:杜 昌彦

母なる夜

商業作家になるために手当たり次第やみくもに読んでいた四半世紀前の話だ質よりも量の性急な読書ヴォネガットは全長編をその時期にまとめて読んだ深く心に残った数作のうちもっとも優れていると思ったのがこの本だところが心と記憶は異なるようで後者には何ひとつ残っていないヴォネガットの小説はリアリズムではないと思っていた出来事も登場人物も戯画的でつくりごとめいていると技法的な意匠としてはたしかにそうかもしれないでも主人公とおなじ年齢になったいま読みかえしてみるとまたしてもあの若造ちっとも読めちゃいなかったと痛いほど思い知らされた抜かれる電球奴隷労働が与えられないことが罰となること差別や裏切りと友情の両立調子のはずれた会話や空を見上げられる部屋ある時代ある場所で当たり前だった暮らしが大罪となり寄ってたかって断罪する側が拠って立つ正義もまた数と時勢でしかないささいな描写のすべての積み重ねがいまウクライナでパレスチナで日常生活やソーシャルメディアで起きていることそのままだ一文一文が矛盾に血を流していて読みすすめるのがつらくなるさらに意外だったのはそうした身を刻むような生々しい実感がスパイ小説の形式に忠実にのっとって書かれていたことでそんなことにすら気づけなかったおれはやはり何にもなれなくて当然だったといわざるをえないハイホー

(2023年11月05日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


カート・ヴォネガット
1922年11月11日 - 2007年4月11日

米国の作家。人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した。現代アメリカ文学を代表する作家の一人とみなされている。20世紀米国人作家の中で最も広く影響を与えた人物。