杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第52回: 極小出版の実践

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
06.10Sat

極小出版の実践

このところ出版レーベルの話と、 「場としての出版ツールの話を同時に書いているので別々だということがわかりにくくなってしまったようです出版レーベルは人格OverDriveとしてすでに行っている活動でわたしがいいと思った本つくりたい本をつくります。 「場としての出版ツールは利用できる手段ですさらにいえばそのための実験です。 「場としての出版ツールは主体的に利用するものでありだれかが何かをしてくれるものではありませんとはいえ前例がなければ利用イメージが湧かないので出版レーベル人格OverDriveの活動をモデルケースにと考えましたこのあたりの説明がなかったのでわかりにくかったと思います本来はサイト自体を別々に分けるべきですがふたつのサイトを運用する手間やコストをかけられないので、 「人格OverDriveで実験せざるを得ずそのためますますわかりにくくなりました

七年前に人格OverDriveをはじめた時点ではセルフパブリッシングとしてレーベルの活動を定義していました当時はお金がかからないので自費出版とは違う」 「企業による従来の出版でもないという区別が必要でしたそのため耳慣れないカタカナが必要とされたのです現在ではその区別は意味をなさなくなりましたちゃんとした本をつくろうとすればお金も手間も制作工程も場合によっては関わる人数も企業で行われていることに近づきます企業といっても大手もあればひとり出版社もありいまでは大手でも自費出版を手がけているところが多くあります七年前は電子出版のみでしたがいまは同様に印刷版をつくって Amazon で売ることができます在庫を持たないことが違いともいえますが完全に在庫ゼロではないにしても大手企業もオンデマンド印刷による小ロット出版を導入しつつあるようです

そうなると大きな違いは規模だけということになります。 『悪魔とドライヴ印刷版の出版にかかった費用は版下作成のためのアプリケーションやフォントFacebook 広告費くらいです成果物も数冊単位で売れたり自分で購入したりしますこれは企業の出版ではありえないことですもうひとつ定義に付け加えるならウェブを利用して成立する出版ということでしょうCreateSpace にしても Facebook 広告にしてもウェブですからInDesign でさえウェブの常時接続による定額制である意味ではウェブサービスの一種といえますふたつの定義を合わせればウェブの利用により数冊単位のごく小規模でも成立する出版ということになります。 「家内制出版業という造語を前回は使いましたが商売なのかどうかは首を傾げるところですので、 「という言葉は誤解を招くでしょう。 「極小出版という言葉がどちらかといえば近いかもしれませんいずれにせよセルフパブリッシングという単語は期限切れでもはや時代に合いませんそれはただ出版と呼ぶべきものです確かにいえることは実現手段が格段に増えたということだけです

今回の改修はやってよかったと思います短期間でつづけて日記を書いているからです書くことへの心理的障壁が薄れるのは自分にとってよいことです社会的には黙っていたほうがいいのかもしれませんがサイト移転をどういう手順で進めるか考えていますサーバ移転ではゼロから再構築するかいまあるものをそっくり移すかで悩んでいますいま試している機能は開放しないことに決めたので理解されないものを公開しても意味がありません)、 ドメインを無理に変える必要はなくなりましたであればそっくり移してもいいかもしれません次の課題は著者タグページの画像です著者画像をヒーローヘッダに指定したいのですがどうしても表示させられませんそれがうまくいったら次はPの刺激の印刷版年末からは小説にとりかかります

考えているのは発達障害者の梁山泊みたいなアパートの話で対比のために健常者の視点が必要なのだけれども健常者がわからないので難儀しています書きやすく読みやすいかたちにするには健常者に感情移入できるようにしなければならずそれをやると完璧な健常者ではなくなるどこかしら欠陥のある発達障害者とそれほど変わらない生身の人間になってしまうそれでは対比の効果が出ません実際の健常者がそうするように発達障害者に非難がましい視線を向けさせるためには性格的な落ち度のない社会的にしくじらない正しい人間である必要があります絶対的な勝者でなければ

もうひとつ意図があってそれはジェンダーの書き方なのですが読みやすく共感しやすいように書くことと意図の両立に悩んでいます発達障害を蔑む健常者でありながらジェンダーでは差別されていてそのことの憤懣を発達障害者にぶつける差別された者が別な者を差別するという構造がなければならないだから健常者は社会による差別構造にされる側の当事者としては憤り抗う人間でなければならないところがそれをうまく処理する方法が見つかりません舞台がアパートという暮らしの場であってしかもそこは発達障害者ばかりが居住しているのでそこに健常者を結びつけるには旧弊なジェンダーロールを押しつけるくらいしか現段階では思いつかないのですそういう発想しかないのは結局のところ差別的なジェンダー観が自分にあるからだろうという気もしますであればこの状態で書きはじめるのはよくないということですもうすこし消化してからだと思うけれども消化するにはまず食べねばならないまずは多くの本を読まねばと思います


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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