メイスン&ディクスン
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メイスン&ディクスン

世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世にその名を残す境界線、すなわち、のちにアメリカを南部と北部に分けることとなるメイスン‐ディクスン線を引くために―。アメリカの誕生を告げる測量道中膝栗毛の始まり始まり。驚愕と茫然が織りなす、飛躍に満ちた文学の冒険。ノーベル文学賞候補常連の世界的作家の新たな代表作が、名翻訳家の手によりついに邦訳。

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著者: トマス・ピンチョン

(1937年5月8日 - )現代の米国文学を代表する作家。1990年代以降定期的にノーベル文学賞候補に挙げられている。作品は長大で難解とされるものが多く、SFや科学、TVや音楽などのポップカルチャーから歴史まで極めて幅広い要素が含まれた総合的なポストモダン文学である。

2018.
02.26Mon

メイスン & ディクスン

長い時間をかけてちびちびと読みすすめた上巻を読むのは三度目だったこれまでは図書館で借りていたので返却期限までに下巻に到達しなかったくりかえし読んだおかげか多少なりとも読書の幅が広がったおかげかあるいは漫画を大量に読んだおかげか今回は意外なほどふつうに楽しめた鮮烈なイメージと饒舌な語り個性的な人物たち奔放な想像力白人の都合で大地に線を引くことの意味を説くに風水の龍脈をもってしたり語りの階層の切り替えを示すのに登場人物の魅力的な個性をもってしたりそれを成立させるための活き活きとした人物描写といいはてしなく逸脱していくかに見えて案外無駄のない構成といいピンチョンでもっとも技法のこなれた作品かもしれない語りの階層の切替は要領をつかむまでは読みにくいと感じたけれどもいったん飲み込んでしまえばむしろ漫画のように情景をイメージしやすい小説だった吹き出しのなかの吹き出しのなかの吹き出しといった語りの作法もそのややこしい語りが自己言及的に茶化されるあたりも漫画的だいっそ漫画そのものだったらここで語りの階層が切り替わりますよというのが視覚的に把握しやすかったろうピンチョンはいちいち断らずに行単位で階層を切り替える牧師が語れぬ描写は作中作に乗っ取られたりもするおまけに興に乗ると横滑りをはじめる端役の魅力的な逸話がやたら饒舌に語られて本筋を見失いそうになるしかしそれもまた手管なのだ物語をさまざまな方向から照らし出すために端役の細かな逸話を積み重ねる少女漫画とおなじだ饒舌な脱線もまた緻密に計算された構成の一部なのだ凝った訳文も慣れれば雰囲気やユーモアを味わうに最適だった二時間で一冊を読み切るような読書しか知らなければ読まず嫌いで避けてしまっただろう数を競うような読書も若いときには悪くないけれども歳をとると長い時間をかけて少しずつ読み味わうほうが楽しめる自分の文体がどれだけ無自覚にピンチョンの影響を受けていたか理解できたし北米原住民の語る夢や奴隷制についての思考などスティーヴ・エリクソンとの共通点にもあらためて気づかされた師匠であるピンチョンもまたアメリカとは何かということを書きつづけている作家なんですね読み終えてSailing to Philadelphiaを聴いていたらあのふたりにもう逢えないことが寂しくなってきた本を閉じてからも登場人物のことを古い友だちのように思い出すそういう読書はひさしぶりだった豊穣な物語性といい人生への胸を打つ洞察といい最高傑作と呼んで差し支えないのではないかと思うファンを名乗れるほど理解してはいないけれどももっとも好きな作家のひとりであることはまちがいない


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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