杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第274回: 装填済

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2020.
09.12Sat

装填済

この天才たちはいままでどこになぜ隠れていたのだろう諸屋さんはすでに編集室水平線さんに見出されてコロナ in ストーリーズを連載していたし若林さんは単にこれまで小説を書いていなかっただけだろうけれどイシュマエル氏がなぜインディで活動しているのかよくわからないしうへ氏に至っては自分の才能をあまり理解していなかったのではないかとさえ思われる人格OverDrive は正直注目を浴びる場とはいいがたい広く読まれるべき才能がこんなニッチでローカルな場所で埋もれている大手文芸出版社は何やってんだよ自転車操業の手形を濫発するだけがあなたたちの仕事なのなどとつい辛辣に考えてしまう事情はわからなくもない一流企業社員には前例からの逸脱が許されずテンプレに収まる無難な商品しか扱えない翻訳小説なら海外での実績で会議を通す見込みもあろうが最初から日本語で書かれた原稿はソーシャルメディアでの数字くらいしか根拠を示せないところが読書の本質は個や内省にある異なる視点を提示し世界を広げるものだソーシャルメディアのアルゴリズムはそれとは真逆で繋がりのもとにだれもが同じであることを強要する均一な世界につながることこそが正義とされ異なる視点は厭われる無害で見慣れていて理解しやすいものがそこでの消費に適している無難なつまらなさが取り柄であるがゆえに最適化された才能はほかのどれとも区別がつかない逆に本物であればあるほど不可視になり淘汰されるそもそもソーシャルメディアですでに成功していればわざわざ出版社を通すまでもなく個人でマネタイズできる大企業の機能不全には同情するが読者としては付き合う義理はない本物の小説にありつけなくなるありつくために D.I.Y. の出版サミズダートをはじめた寄稿者の才能を伝え広めるのは編集者としてのわたしの義務だしかし方法がわからない傑作の数々を預かっていながら見合った価値をなんら提供できていないいやまじでさ日本語文学の最前線を知りたければ人格OverDrive を読みなよってこんなすごい才能が結集する ZINE ってほかにないよここで書きたいと思った作家のあなたや寄稿者の単行本を出したいと思った編集者のあなたは問合せフォームから連絡くださいお待ちしておりますそれともちろんただ話してみたいあなたもねわたしはいつだってオール・トゥモロウズ・パーティーズにいるよ


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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