巨匠にはずれなし。 ウィリアム・ギブスンもニール・スティーヴンスンもみんな彼の影響を受けた。 彼の語りはほら吹きおじさんのユーモアを思わせる。 殺伐とした犯罪小説が苦手な方でも安心して読める。 ちょうど 『メイスン&ディクスン』 の牧師のおおげさな語りに、 子どもたちが 「うっそだあ!」 と喜ぶがごとく、 何も考えずただ身を任せて堪能すればいい。 年寄りの自覚がない小金持に、 ただ与えられるだけじゃいや、 自分の才覚で勝ち取りたいの、 と小娘みたいにもってまわった甘え方をする五十過ぎの元女優。 当て馬大活躍の巻⋯⋯もちろんそんな主人公にも、 軌道修正してくれる可愛い女の子がいるのだけれど。 でたらめに生きてあっけなく殺される悪党のほうが主役よりも輝く。 なんてすてきな作風だろう。 おれたちの多くは人生の脇役に過ぎず、 そのことを恥じていて、 カメラを向けられるとむりにスターを演じようとする。 けれども作家はほんとうは、 スターでも主人公でもないからこその魅力を撮りたいのだ。 その瞬間を見逃さない、 抜け目ない視点こそが作家なのだ。
ASIN: 4150019266
ラブラバ
by: エルモア・レナード
「その映画スターは彼が生まれて初めて恋した相手だった。十二歳のときに」シークレット・サーヴィスの元特別捜査官で今は写真家のジョー・ラブラバは、かつての有名女優ジーン・ショーと出会った。憧れの女を目の前にして、彼の心は浮き立った。徐々に近づいていくふたりだが、ジーンの周りには財産狙いの悪党どもがたむろする。ラブラバは女の窮地を救うべく動き出すのだが…。陽光溢れるマイアミのサウスビーチを舞台に、巨匠が描き上げる男と女の影。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。待望の新訳版!
¥2,090
早川書房 2017年, 新書 368頁
特集: 映画の謎
※価格はこのページが表示された時点での価格であり、変更される場合があります。商品の販売においては、購入の時点で Amazon.co.jp に表示されている価格の情報が適用されます。
読んだ人:杜 昌彦
(2018年03月08日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『ラブラバ』の次にはこれを読め!