安部公房

1924年3月7日 - 1993年1月22日
日本の作家。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。『砂の女』(1962年)は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞など受賞多数。独自の演劇活動でも知られる。1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。

笑う月

ユーモアとイロニー、そして恐怖…。
作家が見た「夢」にまつわるメモ的小品集。

笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。
交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。