D.I.Y.出版日誌

連載第70回: ジャンピング・アウト

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
09.11Mon

ジャンピング・アウト

見本が届いたうーん⋯⋯まぁこんなもんかなという感じCreateSpace は CreateSpace で買うのと Amazon で買うのとで品質が大きく異なるCreateSpace のほうが文字が細くなり全体に上のほうへずれて印刷されるNextPublishing ではそのような品質のばらつきはなさそうだ悪くはないが CreateSpace や KDP Print の代替にはならないそれらのサービスが日本で公式に開始されることはなさそうなのでやむをえず使う感じは拭えない審査中の期間が予約受付中として表示されるのが目新しかった

それはともかく表紙イラストの歪みが気になる印刷のせいではなく原画そのものが歪んでいる自分で描いたからだKDP や CreateSpace の縦横比だとトリミングでごまかせたように思う四六版では横幅が増えどう調整しても左に余白が生じたそのために歪みが際立つ売り物とするには厳しい稚拙さだいま思えば電子版の画像をそのまま拡大し上下もしくは下のほうをトリミングすべきだったしかしすでに表紙作成支援に二千円を支払っている単に PDF 化を代行するだけの無意味なサービスだったけれどもどのようなサービスか問い合わせた際その点について明確な説明はなかった)、 またあの厄介な手順を経てアップロードすることを考えたら億劫になったどうせ自己満足のお遊びに過ぎない妥協した

人格 OverDrive の独自刊行物という位置づけだ品揃えを増やすため試験的に悪魔とドライヴペイパーバック版も再販することにしたいずれKISS の法則も印刷版を出すつもりだ電子版はいずれ絶版にするつもりでいる。 『Pの刺激ペイパーバック版にはガラスの泡も併録した商品説明に書くのを忘れたNextPublishin はいちど刊行申請したら修正がきかない追記:のちに追加料金を支払えば修正できるようになったらしい)。 CreateSpace ではいつでも好きなとき修正できる紹介文も価格もそれどころか本文もだ販売停止も再開も自由にやれる

NextPublising の利点は商品ページに日本語が使え背表紙ではなく表紙を書影にできる点だそうすればまともな書籍に見えるだろうと期待していたやってみたらオンデマンドペイパーバック)」 のような表記になるのでがっかりした素人の自費出版ですと触れ回るようなものだ追記:自前の ISBN を使えるとしか利用時には説明がなかったのでそれを信じて追加料金を支払ったところ自分の屋号にすることはできないとあとからわかった日本語の商品ページとして期待したものにはならない不審に感じることが重なり絶版にして CreateSpace で出し直した)。 サービス自体はどうも一般消費者向けの商売に慣れていない印象を受けた法制度の異なる外国の外部企業であることも大きいだろうAmazon が子会社を通じてやっている商売とはさまざまな条件が異なる

それにしても電子書籍の状況は変わったここ数ヶ月で形勢が逆転した印象がある印刷版が絶版になっても Kindle では読めたりする書影も前は印刷版に較べて解像度が低く雑な画像が多かったのにいまでは電子版のほうが美しい場合が多い解像度の重要さが認知されてきたのだろう印刷版をもとに電子版をつくるのではなく一度に両方をつくれる仕組みが普及しつつあるのかもしれないそういうソリューションが実際に導入されて制作フローが効率化されたのだと思う今後はおそらく CSS 組版が主流になり InDesign は廃れる

悪意あるアクセスはつづいているBAN のリストは長大になった防ぎきれないアクセスもあるお望み通り書くのはやめて差し上げたんだから趣味のウェブサイト制作くらい大目に見てほしいおれが生きて呼吸しているだけでも許せないのかもしれないそれとは別の変なアクセスを調べたら以前お世話になった方だったいまいちど念を押すけれどもセルフパブリッシングとかかわったのは後悔しているそういう関心におれは応えられない取り違えていたのを謝罪します読書とおなじような私的で自由な出版あるいはそうした出版を可能にする手段として捉えていたムラ社会的な政治やご近所づきあいだとは思ってもみなかった

その単語に引き寄せられて集まるのは基本的にコミケ文化のひとたちでおれには鬼門だった親しくさせていただいた方も多くいたけれども彼らとの縁も切らねばならなくなった四十年以上もずっと心の支えにして生きてきた書くということを断念せざるをえないところまで追い込まれたそこまでされてもなお悪意から逃れられずにいる近々Pの刺激のペイパーバックが刊行されますが買わないでくださいあなたが同人誌を好むのは自由ですがその購買行動がおれの本に関連づけられると困るどうか放っておいてくださいただの趣味なんだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。