IQ
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IQ

ロサンゼルスに住む黒人青年アイゼイアは‶IQ〟と呼ばれる探偵だ。ある事情から大金が必要になった彼は腐れ縁の元ギャング、ドッドソンからの口利きで大物ラッパーから仕事を請け負うことに。だがそれは「謎の巨犬を使う殺し屋を探し出せ」という異様なものだった! 奇妙な事件の謎を全力で追うIQ。そんな彼が探偵として生きる契機となった凄絶な過去とは――。新たなる‶シャーロック・ホームズ〟の誕生と活躍を描く、新人賞三冠受賞作!


¥1,166
早川書房 2018年, 文庫 445頁
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著者: ジョー・イデ

米国の作家。様々な職業を経て『IQ』でデビュー。2017年アンソニー賞、マカヴィティ賞、シェイマス賞の最優秀新人賞を次々に受賞。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀新人賞および英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞にもノミネートされるなど高い評価を得た。

ジョー・イデの本
IQ
2018.
08.08Wed

IQ

おもしろいかつまらないかでいえば、おもしろかった。つづきがでたら買って読む。でも宣伝文句ほどでもない。何につけても「いうほど?」という印象なのだ。シャーロキアンの作家による現代のシャーロック・ホームズ、というふれこみだけれども主人公はろくに推理しない。ハードボイルドならそんなもんだろうと思うかもしれないがハードボイルド感も特にない。文体も三人称多視点で意識の流れも多用される。エルモア・レナードやドナルド・E. ウェストレイクを思わせるところはあるし、Amazonのレビュー欄にあるように初期の戸梶圭太みたいでもあるけれど、レナードやウェストレイクのような悪趣味のようでいながら不思議な気品を感じさせるところは皆無で、いまどきなんのひねりもなく直球でミソジニーだし、戸梶圭太のようなぶっとんだ感じもない。音楽やアフロアメリカン・コミュニティの知識も売りにするほどかなぁと首をひねった。アーティスト名にしても何にしてもごくふつうに生活していたら出てくる言葉が書かれているだけだ。時代設定がすこし前だから流行が古いなと感じさせられるくらい(当時にしても古い気がする)。一般読者を想定した訳語だからなのかもしれないけれどヒップホップ用語みたいなのは出てこない。現代の小説ならこのくらいは当然だろうという程度の書き方でしかない。宣伝文句にある「壮絶な過去」もたいして壮絶ではない。どちらかといえば間の抜けた事故のようなものだ。もちろん間の抜けた事故でも近親者にとっては往々にして人生が変わってしまうほどの悲劇であったりするのだけれど。でもこの小説にあるべき哀しみはない。兄が殺されて哀しい、とは書かれている。当事者にとってはそうなんだろうな、としか伝わらない。切実さがない。だれの人生にもあるありふれた別れにしか思えない。もうひとつの負い目についてもハードボイルド小説には必要だから考えたといったふうで切実には感じられない。文体からいっても内容からいってもそういう書き方はハードボイルドではない。歳をとって涙もろくなったこのおれが一度も泣かなかった。最近の読書ではむしろ珍しいことだ。プロットだってひねりも裏切りも驚きもなく、直線的に進んでなんの意外性もなくただ終わるだけだ。アクションはメインプロットにも情動にも絡まない。過去にアクションがあってありふれた負い目が生じました、というだけだ。ハードボイルドならではのおもしろさや情動を期待したならがっかりだ。じゃあ読む価値がないかといえばそんなことはない。感情は動かされなかったけれどもおもしろくはあった。それはキャラクター設定による。たとえばレナードの登場人物ならまさにそんなおかしな悪党が世界のどこかに、あるいは自分の身近にいそうに感じられるほど活き活きとしている。人間への鋭い洞察やあたたかい共感の視線がある。『IQ』の悪党たちはそうではない。ぜんぜんちがう。描写でも洞察でもなく単純に漫画的な設定がいいのだ。要するにキャラが立っている。キャラクター小説、とはこういうのをいうのだろう。気の利いた海外のコミックみたいな楽しさがある。そんな意味で日本版の表紙はよくできている。なんかお洒落な感じがする。ジャケ買いした、という意味ではたしかに音楽的ではあるかもしれない。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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