IQ
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IQ

ロサンゼルスに住む黒人青年アイゼイアは‶IQ〟と呼ばれる探偵だ。ある事情から大金が必要になった彼は腐れ縁の元ギャング、ドッドソンからの口利きで大物ラッパーから仕事を請け負うことに。だがそれは「謎の巨犬を使う殺し屋を探し出せ」という異様なものだった! 奇妙な事件の謎を全力で追うIQ。そんな彼が探偵として生きる契機となった凄絶な過去とは――。新たなる‶シャーロック・ホームズ〟の誕生と活躍を描く、新人賞三冠受賞作!


¥1,166
早川書房 2018年, 文庫 448頁
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読んだ人:杜 昌彦

IQ

おもしろいかつまらないかでいえばおもしろかったつづきがでたら買って読むでも宣伝文句ほどでもない何につけてもいうほど?という印象なのだシャーロキアンの作家による現代のシャーロック・ホームズというふれこみだけれども主人公はろくに推理しないハードボイルドならそんなもんだろうと思うかもしれないがハードボイルド感も特にない文体も三人称多視点で意識の流れも多用されるエルモア・レナードやドナルド・ E. ウェストレイクを思わせるところはあるしAmazon のレビュー欄にあるように初期の戸梶圭太みたいでもあるけれどレナードやウェストレイクのような悪趣味のようでいながら不思議な気品を感じさせるところは皆無でいまどきなんのひねりもなく直球でミソジニーだし戸梶圭太のようなぶっとんだ感じもない音楽やアフロアメリカン・コミュニティの知識も売りにするほどかなぁと首をひねったアーティスト名にしても何にしてもごくふつうに生活していたら出てくる言葉が書かれているだけだ時代設定がすこし前だから流行が古いなと感じさせられるくらい当時にしても古い気がする)。 一般読者を想定した訳語だからなのかもしれないけれどヒップホップ用語みたいなのは出てこない現代の小説ならこのくらいは当然だろうという程度の書き方でしかない宣伝文句にある壮絶な過去もたいして壮絶ではないどちらかといえば間の抜けた事故のようなものだもちろん間の抜けた事故でも近親者にとっては往々にして人生が変わってしまうほどの悲劇であったりするのだけれどでもこの小説にあるべき哀しみはない兄が殺されて哀しいとは書かれている当事者にとってはそうなんだろうなとしか伝わらない切実さがないだれの人生にもあるありふれた別れにしか思えないもうひとつの負い目についてもハードボイルド小説には必要だから考えたといったふうで切実には感じられない文体からいっても内容からいってもそういう書き方はハードボイルドではない歳をとって涙もろくなったこのおれが一度も泣かなかった最近の読書ではむしろ珍しいことだプロットだってひねりも裏切りも驚きもなく直線的に進んでなんの意外性もなくただ終わるだけだアクションはメインプロットにも情動にも絡まない過去にアクションがあってありふれた負い目が生じましたというだけだハードボイルドならではのおもしろさや情動を期待したならがっかりだじゃあ読む価値がないかといえばそんなことはない感情は動かされなかったけれどもおもしろくはあったそれはキャラクター設定によるたとえばレナードの登場人物ならまさにそんなおかしな悪党が世界のどこかにあるいは自分の身近にいそうに感じられるほど活き活きとしている人間への鋭い洞察やあたたかい共感の視線がある。 『IQの悪党たちはそうではないぜんぜんちがう描写でも洞察でもなく単純に漫画的な設定がいいのだ要するにキャラが立っているキャラクター小説とはこういうのをいうのだろう気の利いた海外のコミックみたいな楽しさがあるそんな意味で日本版の表紙はよくできているなんかお洒落な感じがするジャケ買いしたという意味ではたしかに音楽的ではあるかもしれない

(2018年08月08日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


ジョー・イデ
1958年 -

米国の作家。様々な職業を経て『IQ』でデビュー。2017年アンソニー賞、マカヴィティ賞、シェイマス賞の最優秀新人賞を次々に受賞。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀新人賞および英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞にもノミネートされるなど高い評価を得た。

ジョー・イデの本
IQ

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