青春怪談
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青春怪談

美男子で合理主義の青年、宇都宮慎一は商売で店を持つことにのめり込み、その婚約者、奥村千春はバレエの道を邁進している。二人には、早くに伴侶を亡くした親がおり、ある時、親同士をくっつけてしまおうと画策するが……。一方でつかず離れずの関係を続ける慎一と千春をうらやむ周囲の人間から、仲を引き裂こうと怪文書が届き、この二人にもドタバタ劇が訪れる!

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著者: 獅子文六

(1893年7月1日 - 1969年12月13日)日本の作家、演出家。多くの作品が映像化された。1961年にNHKでテレビドラマ化された『娘と私』は、連続テレビ小説の第1作となった。1963年、日本芸術院賞受賞、1964年芸術院会員、1969年文化勲章受章、同時に文化功労者となる。

2017.
04.01Sat

青春怪談

年長者の女性と若い娘さんの会話こういう場面が獅子文六はいいですねぇヒロインの父親が結末近くで意外に男前なところを見せる場面もよかったです慎一のモデルになったとおぼしき人物には 80年代にお金がらみのスキャンダルがあったそうなので物語のその後をつい夢想してしまいます獅子文六はどの作品でも社会通念に囚われずどんな人間性も否定しません常識を疑うギャグの技巧としてであるとはいえ虹色のようなジェンダーの多様性すら受け入れますと同時に身支度をフネに手伝わせる波平のような感性も夫婦の交情のありようとして否定しません読者である当時の一般大衆を否定したら人気作家にはなれなかったでしょう

たしかアーヴィングが同時多発テロについて、 「周縁の立場から書くといった意味のことを書いていました獅子文六もまた周縁の作家です何しろ 1954年の小説なので言葉の上では偏見から完全に免れはしませんでもそこに囚われて目の前の人間を見ないのが凡人であるならば彼は離れた場所からひとりひとりの人間性を常識に囚われず冷静に見抜きますだから時代の言葉による制約にもかかわらず人間性を無視しないのだと思います世間の偏見に抗うばかりでは受け入れられませんしときに権力によって何をされるかわからない清濁併せ呑むとでもいいましょうか、 「わかりやすさを装いながら——というより真っ向からまさにそのものに取り組みながら独自のまなざしをしたたかに潜ませるのが作家なのかもしれません安全なニーズに乗っかって個を断罪するだけでは三流以下です

現代の読者にとってもっとも困惑させられるのが書名の怪談ではないでしょうかおそらくハロウィン向け喜劇映画毒薬と老嬢のような感じを意図したのだと思いますどちらも価値観の急激な変化を題材にしていて雰囲気も似ています戦争の傷や敗戦後の混乱によって価値観が転倒当時の感覚でしたことを怪異ホラーと見なしたように思えますまたストーカーの描写は当時としてはギャグだったのでしょうが実際に経験すると笑えません現代でさえ世間は被害者を責めますし警察も助けにならないことが多いと聞きますまして当時そのような暴力に晒されたらと思うと背筋が冷えますこの物語でも登場人物は通報など考えもしません誰もが誹謗中傷を信じ込んで主人公たちが孤立するといった現実的な展開にならなかったのは幸いですネタバレになるから詳しく書けませんがあの人物のあの攻撃はその後の展開を考えると慎一が潔癖症でよかったなと思いました手に入りそうな獅子文六の小説は残すところ大番だけあとは図書館で読むしかありません


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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