話題になった刊行時に数ページで挫折した本に十年ぶりに再挑戦した。 斬新で画期的と評判で権威ある賞をいっぱい受賞している。 だからきっとおれの読解力がなかっただけで今度は楽しめると思った。 結果おれの能力不足ではなかった。 単にこの本が下手だったのだ。 作家の才能だって微塵も感じられない。 どこが斬新なものか。 こんな手法は大昔からあるし作家が小説を書こうとする話なんてざらにある。 むしろ凡庸でさえある。 大切なのは小説として、 あるいはノンフィクションだといいはりたいのであれば読み物としておもしろいかどうかだ。 『筒井順慶』 や 『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』 のように技法で楽しませるだけの能力を持ち合わせないのなら (技法で評価されたのであればその時点でおかしなことだが)、 大切なのは人間をいかに描くかだ。 その意味でもありえないほど失敗している。 絶望的に低い点で落第だ。 なんの洞察もない。 稚拙すぎる。 おれより下手だろこれ。 褒めるとしたら、 よく調べてありますね。 お上手でちゅね。 中学校の歴史の課題なら A プラスだ。 そういう評価なの? それでゴンクール賞獲れちゃうの? どうも欧州人はナチを主題にすると点が甘くなるようだ。 おおいに下駄を履かされた評価だと知った。 こんなものをご大層にありがたがる読者はおめでたい⋯⋯いやそんなこといっちゃいけないな、 好みはひとそれぞれだ。 おれにはつまらなかったです。 以上。
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HHhH プラハ、1942年
by: ローラン・ビネ
ナチによるユダヤ人大量虐殺の首謀者、ラインハルト・ハイドリヒ。ヒムラーの右腕だった彼は、第三帝国で最も危険な男と怖れられた。チェコ政府が送り込んだ二人の青年によってプラハで決行されたハイドリヒ暗殺計画。それに続くナチの報復、青年たちの運命……。ハイドリヒとはいかなる怪物だったのか? ナチとはいったい何だったのか? 史実を題材に小説を書くことに、著者はためらい悩みながら全力で挑み、小説を書くということの本質を自らに、そして読者に問いかける。小説とは何か? ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作。
¥1,260
東京創元社 2023年, Kindle版 439頁
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世間の評価
読んだ人:杜 昌彦
(2023年10月06日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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