城下町の伝統で、 商店街は今朝から初売りでした。 元旦の朝、 仕事帰りのアーケード街で寝袋やテントを見ました。 ダウンロード販売や通販が当たり前の時代にあっても、 商店街での買い物にはまだまだ魅力があります。 行列がどうなっているか楽しみにして出勤しました。 寝袋やテントの行列を背に、 普段からそのような暮らしをされているお爺さん (平たく言えばホームレス) が、 ベンチに悠然と座っていました。 ベテランの風格を感じました。 漁師さんに無料で貸与して履き古してもらったジーンズを高値で売るサービスを思い出しました。 異なる人生に思いをはせるロマンが評判を呼び、 よく売れているのだそうです。 だれかの日常は別のだれかにはワクワクする夢なのですね。 買い物は単にモノを手に入れるばかりではなく、 物語を楽しむ体験でもあるのかもしれません。
一時間残業して職場を出ました。 戦利品を手にして帰宅する闘志たちとすれ違いました。 店によってはまだ長い行列が粘っていました。 そこにはまた別の物語があるのでしょう。 多くの店先に福袋が並んでいました。 まだ見たことはありませんが書店でも福袋はあるのでしょうか。 本でそのような売り方をするには、 客と目利きである店員との信頼関係が大切です。 何を読めるかわからないけれどもきっといい本に違いない、 とワクワク夢みる体験こそが商品となるからです。 つまらないものを読ませて失望させては成立しません。 それぞれ異なる人生がどのように世界を切り取っているのか、 垣間見せてくれるのが読書です。 異質さに驚いたり、 逃れようもなく似ている痛みに共感したり。 それぞれの切り取り方を提示するのが読書体験であるならば、 「選ぶ」 ことこそが価値を決めるのは当然です。
選ぶからには切り棄てられるものもあります。 そこに反感を持つひともあるかもしれません。 あるいはすべてを陳列し、 たまたま生じたわずかな差違を拡大することで自動的に選別するやり方もあるでしょう。 大規模ストアの 「読み放題」 を見るかぎり、 そのアルゴリズムはあまりうまく機能してはいないようです。 混沌から何かを切り取り、 物語を浮かび上がらせる力こそが本や書店に求められているのだと思います。 そのためには独善的であることに責任と自負を持たねばなりません。