おばあさん
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おばあさん

納富家で隠居生活をおくるおばあさんのもとに、娘婿の浮気に孫娘の婚約騒ぎと心配の種が次々に舞い込む。人生の荒波をくぐり年を重ねた女性の知恵と気骨としたたかさで、おばあさんは厄介事の解決に奔走する。ユーモアあふれる家族小説。

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読んだ人:杜 昌彦

おばあさん

確かに痛快でもユーモアでもあるけれども脳天気な巻末解説のいうようにほがらかでは決してない獅子文六の明るさは人生の苦みを踏まえた強さしたたかさなのであってむしろときとして思い詰めた鬱といっていいくらいだこの小説は開戦前夜のふつうのひとびとの暮らしを描いていて登場人物はこのあと無事ではいられないかもしれないことを現代のわたしたちは知っているそして物語もまたそのことを暗示して終わる初出こそ戦前だけれども筑摩文庫版が底本としたのは 69 年学生運動はなやかなりし時代の全集であるから当然なんらかの手は加えられただろうすくなくとも同全集を底本とした悦ちゃんでは加筆されたとおぼしき文章が散見された家庭内のもめごとが解決してめでたしめでたしなどというほがらかな空気は微塵もなく破滅の近づきを予感させつつ物語はクライマックスを迎える連載時すでに備えていた色合いなのか四半世紀後に後知恵でなされた加筆修正なのかはわからないいずれにせよ家庭内の小さな出来事が世相の大きな動きとつながる視点はこの痛快ユーモア小説の空恐ろしいところだと思う

(2017年09月09日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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獅子文六
1893年7月1日 - 1969年12月13日

日本の作家、演出家。多くの作品が映像化された。1961年にNHKでテレビドラマ化された『娘と私』は、連続テレビ小説の第1作となった。1963年、日本芸術院賞受賞、1964年芸術院会員、1969年文化勲章受章、同時に文化功労者となる。