グレアム・スウィフト

1949年5月4日 –
英国の作家。ロンドンで生まれ、ケンブリッジ大学とヨーク大学で学んだ。1996年にブッカー賞とジェイムズ・テイト・ブラック記念賞(フィクション部門)を受賞。

マザリング・サンデー

あの秘密の裏道を通って、わたしは本当の人生を漕ぎはじめる。一九二四年春、メイドに許された年に一度の里帰りの日曜日(マザリング・サンデー)に、ジェーンは生涯忘れられない悦びと喪失を味わう。孤児院で育ち、帰る家のない彼女は、自転車を漕いで屋敷を離れ、秘密の恋人に逢い、書斎で好きなだけ本を眺める。そこに悲報が――。のちに著名な小説家となった彼女の、人生を一変させた美しき日をブッカー賞作家が熟練の筆で描く。 2017年 ホーソーンデン賞受賞作

この世界を逃れて

かつて著名な報道写真家であった父、精神のバランスを失った娘――交互に語られるモノローグによって、彼らの生の断片が、ねじれた愛の物語が紡ぎだされ、“この世界”の状況が鮮烈に浮かび上がる……今、イギリスで最も注目を集める作家スウィフトが放つ、力強い傑作小説。

最後の注文

ロンドンのパブの止まり木に、うだつのあがらない男が三人。カウンターにはグラスと並んで壷がひとつ。肉屋のジャックの遺灰である。そこにジャックの義理の息子がベンツで乗りつける。「死んだら、マーゲイトの海にまいてくれ」―亡き友の“最後の注文”を叶えるため、弔いのドライブが始まった。挫かれた夢、嫉妬に裏切り…次第に明らかになるそれぞれの過去。思い出は哀調を帯び、秘密もまたあらわになるが、男たちの結びつきはかえって強まっていく。ほろ苦い人生を陰影ゆたかに描きだす傑作長篇。ブッカー賞受賞。

ウォーターランド

妻が引き起こした嬰児誘拐事件によって退職を迫られている歴史教師が、生徒たちに、生まれ故郷フェンズについて語りはじめる。イングランド東部のこの沼沢地に刻まれた人と水との闘いの歴史、父方・母方の祖先のこと、少女だった妻との見境ない恋、その思いがけない波紋…。地霊にみちた水郷を舞台に、人間の精神の地下風景を圧倒的筆力で描き出す、ブッカー賞受賞作家の最高傑作。