特集: 老いと死
瀕死の双六問屋
忌野清志郎
1998年11月~2001年4月にかけて『TV Bros.』(東京ニュース通信社)で連載され、キヨシローが、「俺が唯一(絵本以外で)というくらい、まじめに(ゴーストライターやインタビューおこしではなく)自分で書いた」(「あとがき」より)と語る、「瀕死の双六問屋」を加筆修正した本書は、「理想郷」である「瀕死の双六問屋」で暮らす男が縦横無尽に音楽への愛、社会への怒りを語り尽くすというサイケな作品。君が代、憲法、自殺問題、さらには反核・反原発曲の収録問題を理由としたレコード発禁事件等々エピソードは多岐に亘り、10年以上の時を経ても、その文章はサイコーにクールでホット!
読んだ人: 杜 昌彦
おもちゃの指輪が絆ぐ時
くみた柑
『記憶の森の魔女』
2013年に出版した同タイトルのリライト版。
ある日友達と別れ家に帰ると、そこに建っていたのは見知らぬ家。
華子の周りに次々起こる不可思議な出来事。
『オムライス』
遺品整理をきっかけに、紗花(さやか)は父の思いに触れる。
『偽りの幸せ』
それはまるで、幸せな夢を見ているようだった。
『おもちゃの指輪が絆ぐ時』
認知症になってしまった妻を介護する夫の苦悩と葛藤。
著者の実体験をもとに描かれた認知症介護の闇。
『十二月の街』
クリスマスの、とても短いお話。
読んだ人: くみた柑
夢見る帝国図書館
中島京子
「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら――資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。
日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。
喜和子さんの「元愛人」だという怒りっぽくて涙もろい大学教授や、下宿人だった元藝大生、行きつけだった古本屋などと共に思い出を語り合い、喜和子さんが少女の頃に一度だけ読んで探していたという幻の絵本「としょかんのこじ」を探すうち、帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。
知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!
読んだ人: 杜 昌彦
インヴィジブル
ポール・オースター
はじまりは一九六七年のニューヨーク。文学を志す二十歳の青年の人生は、突然の暴力と禁断の愛に翻弄され、思わぬ道のりを辿る。フランスへ、再びアメリカへ、そしてカリブ海の小島へ。章ごとに異なる声で語られる物語は、彼の人生の新たな側面を掘り起こしながら、不可視の領域の存在を読む者に突きつける―。新境地を拓く長篇小説。
読んだ人: 杜 昌彦
終わりの感覚
ジュリアン・バーンズ
穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?―ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
日本人の恋びと
イサベル・アジェンデ
毎週届くクチナシの花、黄色い封筒に入った手紙、お忍びの小旅行…80代を迎えた老人の謎めいた日常の背後に、いったい何があるのか?老人ホームに暮らすアルマ。日系人イチメイとの悲恋を主軸に過去と現代のドラマが展開する、現代版『嵐が丘』。
読んだ人: 杜 昌彦
ドゥームズデイ・ブック
コニー・ウィリス
14世紀にタイムトラベルしたオックスフォード大学の史学生キヴリンを待ちうける恐るべき試練とは? 歴史研究者の長年の夢がついに実現した。過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代をじかに観察することができるようになったのだ。オックスフォード大学史学部の史学生キヴリンは実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。だが、彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった……はたして彼女は未来に無事に帰還できるのか? ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞したタイムトラベルSF。
読んだ人: 杜 昌彦
ボトムズ
ジョー・R・ランズデール
80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦