特集: 一夜文庫さんの本棚
ウッツ男爵
ブルース・チャトウィン
幼き日、祖母の館でマイセン磁器の人形に魅せられたウッツは、その蒐集に生涯を捧げることを決意する。第二次大戦中、そして冷戦下のプラハで、ウッツはあらゆる手を使ってコレクションを守り続けた。ひとりの蒐集家の人生とチェコの20世紀史を重ねあわせながら、蒐集という奇妙な情熱を絶妙の語り口で描いた小説。
読んだ人: 一夜文庫
星の時
クラリッセ・リスペクトール
地方からリオのスラム街にやってきた、コーラとホットドッグが好きな天涯孤独のタイピストは、自分が不幸であることを知らなかった——。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」による、ある女への大いなる祈りの物語。
23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠が生んだ奇跡の文学。
「20世紀のもっとも謎めいた作家のひとり」(オルハン・パムク)
「カフカやジョイスと同じ正殿に属する」(エドマンド・ホワイト)
「オブライエン、ボルヘス、ペソアと並ぶ20世紀の隠れた天才」(コルム・トビーン)
「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
荒野からやってきた北東部の女・マカベーアの人生を語る、作家のロドリーゴ・S・M。リオのスラム街でタイピストとして暮らし、映画スターに憧れ、コカコーラとホットドッグが好きで、「不幸であることを知らない」ひとりの女の物語は、栄光の瞬間へと導かれてゆく——。
読んだ人: 一夜文庫
ジョー・グールドの秘密
ジョゼフ・ミッチェル
「やつの名はジョー・グールド、世界の歴史上、一番長い本を書こうとしてる男です」
ある日、目の前に現れたのは、風変わりなひとりの老人。出会いが作家の人生と、その作品を変えてゆくーーニューヨークの路地裏に生まれ、今なお、輝きを放つノンフィクションの傑作。ミッチェルの語りを存分に楽しめる、マンハッタンを舞台にしたノンフィクション短編と、彼の最高傑作とうたわれた「ジョー・グールドの秘密」を収録。ジョゼフ・ミッチェル作品集、完結!
読んだ人: 一夜文庫
海峡のまちのハリル
末沢寧史, 小林豊
ときは、いまから百年まえ。かつて世界の中心といわれたオスマン帝国が黄昏の時代を迎えていた。その都である〈海峡のまち〉で、トルコ伝統のマーブリング紙〈エブル〉をつくる職人の孫ハリルと日本人の貿易商の息子たつきが出会う。
「エブル」をつくる工房の家に生まれ育った少年ハリルは、周囲の友だちは新設された学校へ行っているのに、工房の親方である祖父のもとで下働きする毎日。一方、日本からやってきた貿易商の息子たつきは、異国の不慣れな土地で折り紙遊びで暇を持て余している。そんなふたりが海峡のまちで出会い、友情を深め、おたがいの感性をとおして、この街に生きる自分を見つめ直していく――。
アジアを描かせたら右に出る者はいない、『せかいいいちうつくしいぼくの村』の絵本作家・小林豊が絵を、その弟子でトルコをフィールドに取材執筆を行なう末澤寧史が物語と文を担当。師弟コンビが、20世紀初頭のイスタンブルを、生き生きと描く。
読んだ人: 一夜文庫