特集: 穏やかな終末
ウィトゲンシュタインの愛人
デイヴィッド・マークソン
地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた……。ジョイスやベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい〈アメリカ実験小説の最高到達点〉。
読んだ人: 杜 昌彦
ダスト
チャールズ・ペレグリーノ
それは人食いダニの異常発生からはじまった−−あっという間に人を食い尽くす埃(ダスト)の恐怖!あまたのバイオ・サスペンスを凌駕する戦慄の黙示録
ロングアイランドの風光明媚な街で大量発生した謎の微生物は、住民たちを一夜にして食い尽くした。埃〈ダスト〉としか見えないその生物の正体は、異常発生して人間を襲うようになったダニだった! 悲劇はロングアイランドだけにとどまらなかった。人を襲う吸血コウモリの異常生、あらゆる昆虫の消滅など、世界各地から寄せられる異変の数々。このままでは人類が滅亡するのは間近だ——この非常事態にリチャード・シンクレアをはじめとする科学者たちは、最新の技術を駆使して大自然への闘いを始めるが……。あらゆる分野に通ずる第一線の科学者が圧倒的なリアリティで描くバイオ・サスペンス。
読んだ人: 杜 昌彦
ドゥームズデイ・ブック
コニー・ウィリス
14世紀にタイムトラベルしたオックスフォード大学の史学生キヴリンを待ちうける恐るべき試練とは? 歴史研究者の長年の夢がついに実現した。過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代をじかに観察することができるようになったのだ。オックスフォード大学史学部の史学生キヴリンは実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。だが、彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった……はたして彼女は未来に無事に帰還できるのか? ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞したタイムトラベルSF。
読んだ人: 杜 昌彦
ガラパゴスの箱船
カート・ヴォネガット
一九八六年、経済恐慌と戦争と疫病で人類は滅亡の危機に瀕していた。折りしもエクアドル崩壊の直前、ガラパゴス諸島遊覧の客船バイア・デ・ダーウィン号が何人かの男女を乗せて海へ漂い出た。進化論で知られる諸島に漂着したわずかな生存者が、百万年を経て遂げた新たな進化とは? 鬼才が描く旧人類への挽歌。
読んだ人: 杜 昌彦
猫のゆりかご
カート・ヴォネガット
わたしの名はジョーナ。いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。”パパ” モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、『世界が終末をむかえた日』の著者となるべきわたしは、禁断のボコノン教徒となったのだ。 “目がまわる、目がまわる” 世の中は複雑すぎる。愛するサン・ロレンゾ一の美女モナが、世界中のありとあらゆる水を氷に変えてしまう〈アイス・ナイン〉が、柔和な黒人教祖ボコノンが、カリプソを口ずさむわたしのまわりをめぐりはじめる――独自のシニカルなユーモアにみちた文章で定評のある著者が、奇妙な登場人物たちを操り、不思議な世界の終末を描いた長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
アムニジアスコープ
スティーヴ・エリクソン
アメリカ現代文学を代表する作家エリクソンが、近未来、大震災が起きて廃墟と化した幻想的なLAを舞台に、これまで自分が関係してきた女性たちとの記憶を生々しく甦らせ、愛について考察する。
読んだ人: 杜 昌彦
エクスタシーの湖
スティーヴ・エリクソン
突然ロサンジェルスの中心部に現われた巨大な湖。息子を救うために湖底へと潜っていく主人公クリスティンの物語と、2017年西海岸のゲリラ隊の物語が絡み合う。原書の実験的なレイアウトを邦訳版でも再現。北米のマジックリアリスト、エリクソンのカオス的な想像力が炸裂。
読んだ人: 杜 昌彦
真夜中に海がやってきた
スティーヴ・エリクソン
北カリフォルニアでのカルト教団の集団自殺から逃れたクリスティンが、風俗店ひしめく歌舞伎町のホテル・リュウで行なう「メモリー嬢」という仕事とは?地下鉄サリン事件や、ロックスターの暗殺などカオス的な事件の日付から成る「アポカリプスのカレンダー」。その作成にとり憑かれた「居住者」の過去とは?現代アメリカ文学の鬼才が放つ最新作。
読んだ人: 杜 昌彦
西瓜糖の日々
リチャード・ブローティガン
コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説。ブローティガンの代表作。
読んだ人: 杜 昌彦