特集: 天使についての試論
さようなら、ギャングたち
高橋源一郎
詩人の「わたし」と恋人の「S・B(ソング・ブック)」と猫の「ヘンリー4世」が営む超現実的な愛の生活を独創的な文体で描く。発表時、吉本隆明が「現在までのところポップ文学の最高の作品だと思う。村上春樹があり糸井重里があり、村上龍があり、それ以前には筒井康隆があり栗本薫がありというような優れた達成が無意識に踏まえられてはじめて出てきたものだ」と絶賛した高橋源一郎のデビュー作。
読んだ人: 伊藤なむあひ
くるぐる使い
大槻ケンヂ
妹の麗美子が二人暮らしの兄の時夫に、宇宙人にさらわれたとある日突然主張する「キラキラと輝くもの」。神がかり的な“力”を持ったがために大道芸をやらされていた少女の哀しい恋物語「くるぐる使い」。少女に憑いた霊とエクソシストとの戦いを通して、憑依現象は現実逃避の妄想だとする「憑かれたな」。――青春の残酷と、非日常の彼方に見える現代のリアルを描く傑作短編集。
読んだ人: 伊藤なむあひ
江戸川乱歩傑作選
江戸川乱歩
読者諸君、これが日本で一番美しい犯罪小説だ。
耽美的トリック×倒錯的フェティシズムが交錯する、本格探偵小説を確立した初期傑作9編。
日本における本格探偵小説を確立したばかりではなく、恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説をも創り出した乱歩の初期を代表する傑作9編を収める。特異な暗号コードによる巧妙なトリックを用いた処女作「二銭銅貨」、苦痛と快楽と惨劇を描いて著者の怪奇趣味の極限を代表する「芋虫」、他に「二癈人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」。
読んだ人: 伊藤なむあひ
笑う月
安部公房
ユーモアとイロニー、そして恐怖…。
作家が見た「夢」にまつわるメモ的小品集。
笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。
交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。
読んだ人: 伊藤なむあひ
天使についての試論
伊藤なむあひ
ポップな実験小説から始まり、幻想、SF、奇想とゆっくりと移動を続ける小説家・伊藤なむあひの9年間における集大成的作品集
2021年から2022年に書かれた最新作品8作品に、2013年から2020年までに発表した自作のなかから一部改稿/改題したものを含める6作品を加えた計14作品を収録
「奇想/SF作品集『天使についての試論』
01 跳ぶ死
02 空気海苔は有機袋の夢を食うか?
03 知る人
04 五人めはミルクを入れない
05 町の脳髄
06 鏡子の故郷は虚構の故墟
07 天使についての試論
08 暴力はすべてを破壊する
09 函館には続かない道
10 あなたは夜だけの本
11 天使のマーチャン・ダイジング
12 光を飼う
13 星に(なって)願いを
14 四十九パラグラフにも及ぶリロの素晴らしき生涯」
幻視の世界に生きる作者の作品に触れるのにうってつけな、オールタイムベスト的な作品集になっています
読んだ人: 伊藤なむあひ