フライデー・ブラック
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フライデー・ブラック

新人作家としては破格の注目を集め、一躍アメリカ文学界の最前線に立つ一人となったナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー。その視線は、ローカルな日常から近未来的なディストピアを照射し、全人類に根源的な問いかけを挑む。新世代のアフリカ系アメリカ人クリエイターたちの感覚と呼応する、アメリカ文学界からのパワフルでシニカルでスリリングな一撃。「ブラック・ライヴズ・マター」の過酷な現実に生きながら、日常SFともいえるようなシュールでストレンジな展開を生み出す想像力の豊かさやその筆力は、一度足を踏み入れた読者を引きずり込むような圧倒的な引力をもつ。映像や音が浮かんでくるような臨場感のある物語体験と、根底に流れる強く深いメッセージ性を、身体で感じてください。

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著者: ナナ・クワメ・アジェイ= ブレニヤー

(1991年-)米国の作家。ガーナからの移民である両親のもとに生まれ育ち、十代の頃から文学に親しむ。N.Y.州立大学オールバニー校を卒業後、シラキュース大学大学院創作科で修士号を取得。2018年刊行の短編集『フライデー・ブラック』はジョージ・ソーンダーズをはじめ、ロクサーヌ・ゲイ等の作家に称賛され、『ニューヨーク・タイムズ』などのメディアでも高評価を得た。

ナナ・クワメ・アジェイ= ブレニヤーの本
2020.
08.14Fri

フライデー・ブラック

どれだけ痛めつけられても、報復という形を取らない。なにか別の次元から来る哀しみや怒りといった感情。微笑みながら泣いているような、そんな声無き声が漏れ聞こえてくるようだった。
 ページを繰ると、読者は唐突にこのひとつひとつの短い物語の世界に放り込まれる。なにもない真っ白なその空間に、筆者の描いた独創的なプロットを読者は一緒になって辿り、イメージを膨らませ、物語に輪郭を与えてゆく。
 そこに立ち上がったストーリーは、とても創造的であるにも拘らず、現実にある話として、あるいはそう遠くない未来に起こるであろう現実として、重く受け止めさせられることになる。
 一時代であるごく限られた平成という時代に生まれた日本人である私には、常から己の中に偏見が内在している。それは本書を読み始めたときとて同じで、「黒人が書いたものである」という認識が、バイアスが、働いていたことはどう言い逃れようと逃れられるものではない。
 だが、これだけは言わせてほしい。贔屓目なしに、彼は本物の才能だ、と。

 女にどこまでも甘える男という生き物。大量生産大量消費社会の地獄絵図。留まるところを知らない欲望を抱えた消費者の群れ。自己という顔を失ってでも、そこで働くしかない貧困社会の構造と労働搾取。学校での虐めに端を発した無差別殺人。世界の争いによって滅んだ人類。

 そのストーリー群はアフリカ系アメリカ人への差別を描くに留まらず、この現代社会のありとあらゆる問題、構造的欠陥をブレニヤーはシニカルに、ユーモラスに暴き立てている。


趣味でしかものを書いたことのない、名無しの素人エッセイスト(自称)。 この度、どういうわけか当サイト「人格OverDrive」の主宰者である杜 昌彦氏に「掲載してみませんか」とお誘いいただき、こちらに寄稿することに。 29年間、苦しそうなこと、辛そうなことから逃亡している人生。フリーター。 寄稿するジャンルは妄想エッセイ。虚実交えた物語を書いていきたいと思います。
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