フラン・オブライエン
1911年10月5日-1966年4月1日
アイルランドの作家。長篇第一作『スウィム・トゥー・バーズにて』はベケット、ジョイスらに高く評価されたが、第二作『第三の警官』の原稿は出版社に拒否される。1960年代に『ハードライフ』『ドーキー古文書』を発表。没後『第三の警官』が出版されると、前衛的方法とアイルランド的奇想が結びついた傑作として絶賛を浴びた。
ドーキー古文書
遁走する言の葉たちの狂想的喜劇! 海辺の町ドーキーでミック・ショーネシィが知りあった科学者にして神学者ド・セルビィは、厭世が昂じて世界破壊計画を企て、大気中の酸素を除去する物質D・M・Pを研究開発していた。嘘か真か、それによって時間を停止させることにも成功したという。一方、ミックは行きつけの酒場で「ジェイムズ・ジョイスが死んだという報道は眉唾物だ」と聞かされる。ダブリン郊外で名前を隠して居酒屋の給仕になっていたジョイスを探し出したミックは、彼をド・セルヴィに会わせようと画策するが……。世界破壊、時間の停止、彼岸との交信、生きていた(?)ジョイスといった奇想に加えて、オブライエン作品ではお馴染みの奇人たちが登場、ほら話とも真面目な議論ともつかぬ会話がくりひろげられる。世界中で愛されたアイルランド文学の異才フラン・オブライエン最後の傑作。