イシュマエル・ノヴォーク
イシュマエル・ノヴォーク短編集
イシュマエル・ノヴォーク氏の世界
第1話: ピンボールタッチ
ONE ボウル・モア社製ピンセッターが等間隔でピンを並べた。すべてのピンは一五〇〇グラムで発注されたが、長年、油が塗られたボウルに小突き回された結果、おおよそ五〇から八〇グラムほど軽くなっている。ファウルラインの上で […]
第2話: ローン・スター
1960s El paso へし折った生木で焚火をかき混ぜると苦し紛れに火の粉が飛び出した。バーリングが火の粉を目で追う。中空を舞った火の粉が黒ずみ、哀れな塵が土くれの上に寝転がった。薮 […]
第3話: ブローティガンの隣人
ソファの上でうたた寝をしていたアーバイン・マッカムスは目覚めるなり、すっかり泡が消えたビールの残りを飲み干した。つけっぱなしのテレビ、ブラウン管の中では何度目の再放送か権利者ですら定かでないメロドラマが映し出されている […]
第4話: デッドマンズ・ナイト~サタデー・ナイト・サタナイト・ショー
モーテルでシャワーを浴びたデッドマンはぬるま湯を洗顔タオルで拭き取ってベッドに腰掛けた。デッドマンが自身を〈死んだ男〉と名乗るようになったのは三年前に事業に失敗して債権者に追われる日々から逃れるために自動車に乗り込んだ […]
第5話: ビートボックス
ラスターは五人兄弟の末っ子で、家族全員から可愛がられた。彼は兄弟の中で唯一、まともに学校に通った。なぜなら、兄たちが毎日、口を揃えるように 「おれみたいになるな」と言い続けたから。兄たちがストリートで有名だったことから […]
第6話: トラック・メイカー
ラスターとワシリーは二人揃って狭いガラス張りのブースを見つめている。ブースの中でアルトサックスを吹いているのはジャズ・プレイヤーのイツホク・フェルドマン。ラスターがフェルドマンと知り合ったのは、初めてのガールフレンドで […]
第7話: ウィークエンド
ハーグレープ通り沿いのメソジスト派教会で行われた禁酒会は二〇時に終わった。円を描くように置かれた椅子から立ち上がったジャコビは会員たちに愛嬌を振りまきながら外に出て、セフィーロに乗り込んだ。 ジャコビはイングルウッド […]
第8話: 二つの部分と五つのハプニング
水曜の晩。居間でラスターが砂糖入りコーヒーを飲んでいるとルームメイトのワシリーが部屋から出てきた。ワシリーはスポーツ用ジャージを着ており、作業に没頭していたのか汗ばんだ臭いが漂っていた。ワシリーは椅子に深々と腰掛け 「 […]
第9話: 歯科狂騒曲
ラジオ放送局、『スーパーカリフォルニアエクステンドシドヴィシャス』にやってきたラジオDJ、ジョニー・オーロラの異様さにイースタン・ジェイコブスは目を丸くした。 アフロヘアーにトンボのように大きなサングラス、ブルース・ […]
第10話: クリーン・イズ・オーヴァー
一五フィートのプラスチックレーンの上をポリウレタンに可塑剤を塗ったリアクティブウレタン、一三ポンドのボールが滑るように転がり一〇本のピンを倒した。ボウル・モアー社製ピンセッターが倒れたピンとボールを回収し、ボールは地下 […]