昨年秋に読んだ。 邦訳された当時は図書館で手にしただけで読まなかった。 『チャンピオンたちの朝食』 のようにタイポグラフィが凝っていた印象がうっすらあるのだが電子版でどのくらい再現されたのかわからない。 タイポグラフィや図版で読書体験をコントロールしようとする表現様式はウェブや電子書籍に向かない。 どの環境でも表示するためには明朝とゴシック、 太さと大きさくらいしか指定できないし、 指定したところで閲覧環境や設定次第でどうとでも変わるからだ。 物語は法螺話寄りのロードノヴェルで、 家族の謎めいた歴史を探る探偵ものでもあり、 その顛末を若者が語る青春ものでもある。 ちょっと魔術的リアリズムっぽいところもある。 最大の魅力は語りにあって、 おそらく原文では 「未熟な学習者による英語」 が再現されているのだろうけれども、 よくもまぁうまいこと 「妙な日本語」 に移し替えたものだと感心する。 独特のいいまわしは癖になり真似をしたくなるほど。 登場人物 (犬も含めて) も魅力的だ。 印象に残ったのはそこまでで、 読んで数ヶ月経ったいまではどんな話だったかもう思い出せない。 書く/語るということについての物語だった、 としか憶えていない。
ASIN: B008V93WAW
エブリシング・イズ・イルミネイテッド
by: ジョナサン・サフラン・フォア
ジョナサン・サフラン・フォア最新作『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』発売にあわせて デビュー作を電子化!
著者20代半ばでのデビュー作にして、全米60万部の大ベストセラー。自らのルーツと、祖父をホロコーストから救ってくれた女性を探しにウクライナの片田舎へ向かう青年と、ウクライナ人通訳との奇妙な珍道中と明らかになる家族の秘密。時代も国境も超えて絡まり合うヴォイス──衝撃のデビュー作。
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変な家族のまともな歴史
読んだ人:杜 昌彦
(2022年02月07日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『エブリシング・イズ・イルミネイテッド』の次にはこれを読め!