イシュマエル・ノヴォーク

コロナの時代の愛

『暈』『コイディシュ・ブッフ』のイシュマエル・ノヴォーク氏が同時代を描く新境地!

第1話: たんぽぽコーヒーを飲みながら

 庭に生えたたんぽぽの根を塗装が剥げて赤錆がこびりついたシャベルで掘り起こしたチャーネットは、たんぽぽの根を折ってアルミのカゴにいれた。水道の蛇口を捻り、ホースの先から水が滴り落ちる。土を落としたチャーネットはカゴを振っ […]

第2話: カウチ・ポテト

多くの人が触れ合うことを避けている。

第3話: フロックコート

 クローゼットを開けたチャーネットはカット・アウェイ・フロックコートに袖を通した。フロックコートはサイズが間違っているかのようにぶかぶかだった。着替えを済ませたチャーネットが電気ケトルで湯を沸かしていると廊下を歩く足音が […]

第4話: フランス組曲

 イトスギの響板に開けられた穴には金属の飾りがはめ込まれている。時計の文字盤みたいな装飾のローズ。ローズの上には真鍮と丹銅の弦が張られている。週に一度は自分で調律する。誰もいない居間で行う調律は作業じゃない。それじゃあ、 […]

第5話: 六本足のチャーネット

 玄関の前に置かれた歩行器を見たチャーネットは憎々しげな顔で 「こんなもの必要ない」と言った。ポーリーンは手をヒラつかせて 「折角、物置から引っ張り出してきたんだし。それに、もし転んだりしたら一大事よ?」 「わしは八九歳 […]

第6話: 汝の母、もしアルバートの妻なりせば

 静まり返った居間、ソファに身を投げ出したアルバートが紙巻煙草を吸っている。ガラス製の灰皿には吸い殻が消化不良を起こしており、低いテーブルの上に灰が落ちている。居間を転がるパディントンのぬいぐるみ、アイアンマンの人形、正 […]

第7話: パーフェクト・デイ

 水色の平屋の周りには背の高い杉が植えられている。家の裏手にはガレージがあり、白いワンボックスカーが停まっているのが見えた。  歩行器を押すチャーネットはネクタイのコブを撫でながら咳払いした。言うべきこと、かつて言うべき […]