イシュマエル・ノヴォーク

八秒、栄光のとき

『☆』『コロナの時代の愛』『ノミのサーカス』のイシュマエル・ノヴォーク、期待の新連載!

第1話: 第一章 ~ベンジャミン・コーリッツ

コップに張られた水道水の中には特注品の義眼が沈んでいる。義眼の虹彩は青色、瞳孔は黒色。虹彩の外側は毛様体を模した紐状の模様が描かれており、それらは日暈と幻日のように見える。  鏡の前に立つベンジャミン・コーリッツは鏡に顔 […]

第2話: 第二章 ~エミール・バーリング

長方形のテーブルを囲むように腰掛けた男たちの胸にはサークル・スターが装着されており、ピストルベルトとカウボーイハットは彼ら以上に年季が入っている。シャツとジーンズは最古の法執行機関として支給されたものではないにも関わらず […]

第3話: 第三章 ~マルケス・カスティロ

膝丈ほどの高さのガスバーナーに赤々とした火が灯る。ボビーは血管が浮き出た黒い腕に握られた釘節刀《ちょうせつとう》を釘節に引っ掛けるとハンマーで釘節《ちょうせつ》を叩き起こし、金属が打ち付けられる重い音が響いた。釘節が真っ […]

第4話: 第四章 ~残氓Ⅰ

コーリッツは吹き上げられた砂埃の中を歩いている。通りに立つ速度規制の標識は黄ばんでおり、投げ捨てられた空き缶が転がっていく。道路脇にビッグホーン(※ ウシ科ヒツジ属の偶蹄類)の胎児の死骸を見つけたコーリッツが足を止めた。 […]

第5話: 第五章 ~残氓Ⅱ

ソファに腰掛けたコーリッツは乳白色のプッシュフォンの受話器を手にとり視界を狭めるように上を向きながらボタンを押した。流し台で蛇口が捻られたまま水が流れ続けているのを見たコーリッツは受話器をソファに置いて立ち上がった。老人 […]

第6話: 第六章 ~グリット

カウボーイハットの顎紐を結んだカスティロが馬に飛び乗り、後橋《こうきょう》に手を置いた青年が白い歯列を見せる。コーリッツは首を傾げると腕を組み 「足に力を入れるな。膝で馬体を挟むな。頭、肩、腰、踵が地面と垂直になるように […]

第7話: 第七章 ~競技当日

色褪せた縦じま模様のパジャマ姿のコーリッツが洗面台の鏡の前に立つ。コップに並々と入った水道水の中には虹彩が青い義眼が沈んでいる。コーリッツは鏡に向かって顔を近付けるとコップに手を伸ばし、プラスチックのコップは皺が寄って筋 […]

第8話: 第八章 ~フォー・エヴァー・ア・デイ(For ever a day)

エミールはフロンテージ・ロードでピックアップトラックを停止させた。バックミラーには引き攣ったような、険しい顔が映る。自動車を降りたエミールは舗装されていない乾燥した荒地を歩き出す。黄ばんだ低木と薄茶色の細長い葉を茂らせる […]