夢見る帝国図書館
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夢見る帝国図書館

「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。もし、図書館に心があったなら――資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たち(のちに永井荷風の父となる久一郎もその一人)の悪戦苦闘を、読書に通ってくる樋口一葉の可憐な佇まいを、友との決別の場に図書館を選んだ宮沢賢治の哀しみを、関東大震災を、避けがたく迫ってくる戦争の気配を、どう見守ってきたのか。
日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。
喜和子さんの「元愛人」だという怒りっぽくて涙もろい大学教授や、下宿人だった元藝大生、行きつけだった古本屋などと共に思い出を語り合い、喜和子さんが少女の頃に一度だけ読んで探していたという幻の絵本「としょかんのこじ」を探すうち、帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。

知的好奇心とユーモアと、何より本への愛情にあふれる、すべての本好きに贈る物語!


¥2,035
文藝春秋 2019年, 単行本 404頁
特集: 
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読んだ人:杜 昌彦

夢見る帝国図書館

冒頭で語り手が風変わりな年長者に出逢い後半でその人生の謎が明かされる元ネタのこころがそうであるように推理小説の趣もあるのだけれどそれほどすっきり割り切れない謎が謎のままで終わるからではなく書き方というか人物への踏み込みが不充分だからだ肝心なところを迂回して書かれた印象があるジェンダーの話もそうだし主題であるところの女性の人生もそうだ解き明かそうとするほど見えなくなる種類の謎ではあるからいいといえばいいのだけれど何かいまひとつ食い足りない登場人物が基本的にみんな善人で思いきった残酷さ汚さを回避しているからかもしれない小説のありようとしてお上品にいい顔をしすぎているあいだに挟まれる帝国図書館のくだりや主題の女性が書いた小説の断片めいたものももうちょっと思いきってやりすぎなくらい過剰に書いてもよかったのではないかとりわけ帝国図書館の話は中途半端にまんが的な書き方がされているのが性に合わなかった笑いを意図するのであれば文体はあんな崩し方をしないほうがいい擬人化するのかと思えばもしも図書館に心があればといった仮定の話に急にトーンダウンしたりどっちつかずの印象が拭えない文体の遊びという面でいえば小説の断片のほうはそれらしかった対比によって元三流ライターである語り手の技量を示す意図だろうけれどそうであるにしてももっと極端に踏み込んだやりようがあったのではないか本来は三倍の長さを要する小説だったと思う何かを批判したと受けとられないようにあえて配慮したのではなかろうかジェンダーについて紋切り型の不自然な説明がいきなり出てくるあたりもそうだ書けるはずの作家が口ごもっているような口ごもらされているようなもやもやした感触が残るソーシャルメディアで話題になった作品が表紙を飾っているたしかに魅力的なオブジェではあるけれどそうしたものを装幀に用いるあたりからして文芸作品としての鋭さよりソーシャルな体裁を優先した企画なのだなと感じたもっといい本になれたはずなのに残念だ

(2020年01月30日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


中島京子
1964年3月23日 -

2010年『小さいおうち』で直木賞。2014年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞受賞。2015年『かたづの!』で河合隼雄物語賞・歴史時代作家クラブ作品賞・柴田錬三郎賞を受賞。『長いお別れ』で中央公論文芸賞・日本医療小説大賞を受賞。