D.I.Y.出版日誌

連載第316回: 憎み合ってるかい?

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2021.
04.15Thu

憎み合ってるかい?

まちがった客層にしか届いていないKindle ストア自体の客層が合わないのが大きな理由のひとつでそれについてはコンテンツの拡充によっていずれ改善されると期待しているでもそれだけではなくたとえば商品説明で誤解させている面もあるのだろうこちらの見せ方で変えられる部分もあるはずだそう信じなければ嘆くだけではだめだ向上したい十年やってきて装幀も epub も POD も WordPress も技術はかなり向上した売ることだけがうまくやれていない適切な客層を見出してそこへ到達することさえできれば依然として関連商品にゴミばかり表示され低評価がつくということはまちがった客層に届いているということだゴミを好む連中から低評価を受けるなら高品質という理屈になるがストアの表示上はそうはならないゴミ扱いになりゴミと関連づけられゴミ好きペド野郎の前に表示されて低評価を受ける悪循環だ自著の関連商品ではなくあんたにはこれがお似合いだの決めつけ枠に暴力温泉芸者の新刊が表示された自主出版っぽかったあの手の芸風で売っている人物があの商品紹介を自分で書いたのかやはり成功する有名人は立ちまわりがうまいあるいは業者を雇ったのかもしれないけれどいずれにせよおなじことだ翌日の追記:評論家のやっている個人レーベルで一応は法人であるらしい)。 ずるくなりたい自己宣伝だけがどうしてもだめだ嗤いものにされる結果にしかならないソーシャルな能力が致命的に欠如している生まれつきの欠陥で努力だけではどうにもならないかといって諦める気にもなれない蔑まれるだけの人生には疲れたうまく立ちまわる健常者たちが怖ろしいアカウントを開設してあのような場であのようにうまく立ちまわる技能がそれを身につけなければ先はないしかしあのような卑劣な人間が器用に立ちまわりそれ以外の人間性が貶められる場でうまくやる才覚はないなくとも身につけなければと思うけれどもメンタルが耐えられない別にあの場でなくともほかに場があればいいのだがどこにも適応できないできるのであればいまこのような扱いを受けこのような文章を書いてはいないいちばんいいのは Amazon に最適化されることだがそれが難しいのでよそを探すしかないコンテンツの拡充が進めばと期待したがよく考えたらそれも望み薄だこれまでが長すぎたすでに方向性ができあがっているときどき UI を変えたりしてリセットしようとはしているようだけれども根本的な変化にはならないいまだに Kindle の主な客層は小説を読んだことのないペドアニメ好き男性でしかないそしてやっぱり関連付けそのものがおかしいままだ顧客の嗜好を一顧だにしない商品を一方的に売りつけようとしてくる膨大な時間を Amazon に好みを教える作業に費やしているにもかかわらずこれだからそうでない一般の顧客はもっとひどいものを見せられているはずだそして彼らにとっては見せられたものこそが全世界なのだろうからそこから選択することになりAmazon としてはそれで商売が成り立つから困らないのだろうしかしそういう商売をつづけられてはいずれ読書とはつまらないものだということになり文化が滅びる別に Amazon のせいではなくインターネットそのものがそうしたものだしそれ以上に日本の出版業界がそういう商売をしてきたツケでこうなった安易な商売が文化を滅ぼしたのだ出版業界がこの二十年読者を育てる努力を怠ってきたのと電子化のための整備に時間をかけすぎたのがいけない契約の習慣がない口約束文化に乗っかって著者を搾取してきたところに黒船来航で世の中が一変したのだから手間取るのもむりはないが⋯⋯まぁ読書文化なんて滅びてもだれも困らないしなあの場で大人気だという数ページの漫画をつい見てしまったら壮絶につまらなくて愕然としたつまらないものでなければ評価されない世の中なのだつまらなくて数秒で読めるくらい短いというのが人気の秘訣でそれと逆であればゴミ扱いされるインターネット自体の客層がもうそういうものなのだそういう客だけとは思えないどこかには適切な客層があるはずだと信じその架空の客層に到達する努力をしていたのだが客を選ぶと売れない今月の売上は二百円だそもそもおれに居場所などあるはずがない生きるのに向いていない何をどれだけ努力してもむだだせっかくの休日だというのに何も書く気になれず瀕死の双六問屋を読みかえす以外に何もしていない別に忌野清志郎のファンではない手元にその本しかないだけだ清志郎は化粧をして髪を逆立てバンドメンバーを入れ替えロックに転向し舞台で派手な言動をするようになるまで売れなかったのだそうだおれが子どもの頃にはすでに教授とデュエットしていたのでそれ以前から有名なのだと思い込んでいたあれで人気が出たとは子どもというのはずっと以前から進行しているゲームに途中から参加させられるからそのとき流行っているものはずっと前から権威なのだと思い込むだからいまの若者がなおさら気の毒だ自分を効率よく搾取するだけのつまらないコンテンツをありがたがる成長の機会は得られない同調しない奴は寄ってたかって袋叩きだそんな場でそんな客に喜ばれるべく化粧をして髪を逆立て派手な言動をせねばならないレーベル名のアカウントを作成し事務的なツイートをしたときは客の反応も鈍かったしスパム認定されて凍結されたおれの性格の悪さを誇張した人物像を演じた時期がもっとも反応が大きかったやめたのは客層が悪かったからだひどく悪化していまだに戻らないしかし悪名は無名に勝るというまたあれをやるべきかもしれないインターネットで喜ばれるコンテンツは結局のところわかりやすいキャラであり短文であり中身のないつまらないものであり他人を貶める材料だいやなやつが愚かしいことをやっていれば大勢が群がってきてそいつを話題にするまたあれをやるのか? やるなら今度はだれに何を思われようが一顧だにしないおれはいやなやつだだが書くものは一流だ理解しないおまえらが悪い知ったことか


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。