絶望
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絶望

ベルリン存在のビジネスマンのゲルマンは、プラハ出張の際、自分と“瓜二つ”の浮浪者を偶然発見する。そしてこの男を身代わりにした保険金殺人を企てるのだが…。“完全犯罪”を狙った主人公がみずからの行動を小説にまとめ上げるという形で書かれたナボコフ初期の傑作!


¥1,144
光文社 2013年, 文庫 389頁
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著者: ウラジーミル・ナボコフ

(1899年4月22日 - 1977年7月2日)帝政ロシアで生まれ、欧州と米国で活動した作家・詩人。米国文学史上では亡命文学の代表格の一人。自作の翻訳も手がけ、大小を問わず改作を多く行ったのみならず、その過程で新たに生まれた作品も存在する。

2020.
03.15Sun

絶望

好きなものしか書きたくないそれ以外はどうでもいいという清々しいまでの強烈なこだわりで構築されたアーダとは真逆できらいなものが皮肉り倒される悪意に満ちた小説とりわけ同性愛嫌悪がひどくて読みすすめるのが苦痛だった村上春樹によく見られる、 「同性愛者としての自分を畏れる強迫観念がここでも取り上げられる同性愛嫌悪はないもののというかその種の差別にはむしろ敏感に反撥する作風ではあるけれどディックもまた鏡像ドッペルゲンガーに取り憑かれた作家で彼お得意の妄想と現実の描き分けというか、 「信頼できない語り手による一人称の主観でありながらそれが妄想であることを客観的に悟らせる技術はナボコフに学んだとしてもおかしくない幻覚が一瞬揺らいで現実が像を結ぶとか似ても似つかぬ無関係のものを混同するとか統合失調症的な描写で巧みに仕込まれた伏線はナボコフ自身が映画化を望んだという逸話も肯ける視覚的な演出でよく似た手法がディック作品ではヴァリス暗闇のスキャナーに見られるし映画でいえば近年話題になったジョーカー』 (題材やプロットもきわめてナボコフ的でもおなじ手法が使われている相手が目覚める前にホテルを去る場面や恨み辛みが書き綴られた手紙の描写はあまりに生々しい差別的なあてこすりに思えたそのように読めるべく意図されたことは作中で明確に言及される)。 ナチに反撥した作家がなぜナチとおなじ悪意をもちえたのか悪意があるならなぜここまで真実味のある描写をなしえたのか彼の弟なら理解できたのかもしれないがいずれにせよ作家とは複雑なものだ鏡像への関心であると同時にこの物語は、 『アーダがよくある通俗ロマンス小説からプロットを拝借したようによくある替え玉殺人ミステリのパロディでもあるそれも悪意そのもののパロディであって、 「そんなに都合よく似た人間がいるはずがなかろうという多くの読者が感じつつ言及しない不自然をあえてばか正直につっこんだらどうなるかという当時としては斬新であったに違いないギャグをやっている前作カメラ・オブスクーラの踏襲ないし発展であるとともに本書の連載と同年に刊行された郵便配達は二度ベルを鳴らすのちょうど裏返しでもある人物配置には通俗的な犯罪小説を嗤う意図があるのだろう諧謔による実験がエンターテインメントの技法を拡張するのを実感させられた一方でナチが台頭した時代さながらの不安がメディアによって煽られる昨今悪意や差別意識は現実だけでたくさんだよという気分にもなった


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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