ベイツ教授の受難
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ベイツ教授の受難

言語学の元大学教授ベイツは難聴のため早期退職し、ときおり、やはり難聴で認知症の父親の家を訪問している。再婚した妻のフレッドは自営業で成功し、夫は妻の「付属品」のような存在だ。ベイツは女子学生アレックスの論文指導をすることになったが色仕掛けにうんざりしてしまう。しかもテーマは「自殺の遺書」分析。夫婦仲もますます冷え、何をやっても失敗ばかり。そんな中、ベイツはポーランドへ講演旅行に出かけ、アウシュヴィッツを見学して衝撃をうける。妻からの電話で娘が産気づいたことを知らされた直後、息子から祖父が倒れて入院したと連絡をもらう……。人生の盛りを越えた難聴の主人公ベイツ、老いて一人暮らしの父親、虚言癖のある女子学生など、一筋縄ではいかない登場人物たちが物語を盛り上げる。読者をおおいに笑わせつつ、「老い」「死」というテーマをしんみりと、かつ明るく描く、大御所ロッジ集大成。

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著者: デイヴィッド・ロッジ

(born 28 January 1935) 英国の作家、英文学者。経歴を生かした、学者世界を舞台とした「キャンパス・ノヴェル」作品で知られる。『交換教授』『素敵な仕事』は英国でテレビシリーズ化されている。1998年の新年には、その文学に対する貢献のため大英帝国勲章が与えられた。

デイヴィッド・ロッジの本
2013.
05.09Thu

ベイツ教授の受難

主人公は難聴をきっかけに退職した元教授。会話が成立しないがために疎外される様子は他人事とは思えない。彼を追いまわす若い女子学生はサイコパスだ。心の隙に入りこんで他人の人生を振りまわし、社会的な死へ追いやることで自我を保つ。離れて暮らす父親は、元教授が初老であるからして当然、年寄りであることのベテランだ。老人力がつきすぎて惚けはじめてる。主人公はその心配もせにゃならんわ、ガキ臭いお色気サイコパスには振りまわされるわ。おまけに再婚相手ときたら、金持ち相手の商売で成功したデキる女で、難聴ニートの元教授は、何かと引け目を感じなきゃならない。あげくのはてにアウシュビッツくんだりまで旅行して、死についてクヨクヨ考える始末。

噛みあわない会話。コントロールされる不安。同居人からの軽蔑。そして自身よりも一足先に、肉親へ迫る老いと死……。だれの人生にもあるあれやこれやが、センテンスの隙間からよみがえる。筋運びがまた巧い。社会から疎外された主人公。ただでさえハンディキャップのある彼のもとに、若い女が厄介な事件を持ちこむ。女の動機はいったい何か? 探るうち別の揉め事まで浮上。あのトラブル、このトラブルが錯綜し、幾重にも絡みあいもつれあう。すったもんだのあげく舞台にツイストがあって、もどってきたときには物語は様相を変えている。そうして謎を解き明かした主人公が、トラブルの元凶や、被害を拡大させたまぬけを断罪する。比喩と筋が渾然一体となってるのがいい小説の条件だが、まさにそんな話で、聞きまちがいや言葉遊びが皮肉なギャグを装いながら、全体をまとめあげる。そして物語はハッピー・エンドを迎える。勃たなくなるほど老け込んじゃいないとはいえ、そこは元教授、年の功。最後には諸問題に、ばっちり決着をつける。黄泉の国から知恵を授かって帰還したみたいに。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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