『ダンス・ダンス・ダンスール (7)』 読了。 もんのすごい傑作だった。 読めてよかった。 人生でいちばんというくらいすごい漫画。 三年前の今頃、 海野つなみ 『逃げるは恥だが役に立つ』 の一巻を読んでいて、 あれは最初はそれほどでもなかった。 その時点では LGBT の描き方が差別的だったし、 「普通の人」 の視点から描かれていて、 よくできてはいるけれども心から絶賛はできかねた。 それが連載がつづくうちに思考が深まり、 多様性へのまなざしが行き届いて、 最終的には現代的な価値観の提示に成功していた。 化けた、 という印象。 対して 『ダンス・ダンス・ダンスール』 は最初からすごかった。 作家のこれまでの積み重ねが意欲的な挑戦によって爆発した感じだ。 ほんとうにほんとうにすごい。
ちょっとしたカットが肩の力を抜きつつしっかり描かれている。 すげえなと思わされた箇所がいくつもある。 今回まず打ちのめされたのは女装する少年の骨張った体つきや、 父親を亡くしたばかりの子どもの家が散らかっているわずかな背景描写。 言葉ではなく絵でさりげなく、 なおかつ最小の線で的確に見せる力量ね。 とにかく確かな技術と力があって、 そしてその力を必要に応じてふわっと抜いている。 ああいう加減は本物でなければできない。 正直ジョージ朝倉にここまで惚れ込む日が来るとは思わなかった。 前にも書いたけれども 「惜しいところで何か違う」 作家だったんだよこれまでは。 あとね、 個人的には 「プロじゃねーし」 が響いたわ。 この台詞プロであるところの著者はどんな気持で書いたのかなぁ。
ジェンダーの揺らぎを描いてきた作家が少年誌・青年誌に挑むのは、 もしかしたら最近の流行なのだろうか。 多くの作家がそこでの仕事を (プロとして!) 憶えるにつれ当初の閃き、 鮮やかさを失うのに対して、 この作品は逆にますます力を増している。 こんなすげーものを部屋に居ながらにして購入してすぐ読めちゃうってすげえ時代だなぁ。 Spotify でエリック・ドルフィーを聴きながらコンビニで買ったポケット瓶のジャック・ダニエルズを飲みながら、 指先でクリックしただけで本を見つけて買って読めちゃうわけだから。 ドルフィーの音楽にしたってなんとなく前衛っぽいイメージだったけれども、 Spotify で彼の仕事を何枚も通して聴いてみると、 作品によってアプローチを変えていて、 同じ時代でも直球のハードバップだったり、 リーダー作でなければ主役を引き立てたり、 いろいろやっている。 こういう一流の 「芸」 をふと思いついたらすぐさま楽しめるって、 なんて幸せな時代なんだ。
『ダンス・ダンス・ダンスール』、 いまもっとも楽しみにしている作品だよ。 描いてくれてありがとう。 それこそ 「光が爆ぜてバチバチドーン」 「宇宙の爆発」 でしたよ。 次を読めるのは三ヶ月先か⋯⋯待たされてもいい、 いいものを読ませてください。 よろしくお願いします。