D.I.Y.出版日誌

連載第48回: 新しい本のつくりかた

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
05.16Tue

新しい本のつくりかた

印刷版の続報ですCreateSpace にかけあって表紙を商品画像にしてもらったのにLook Inside が反映された途端にまた裏表紙へ戻りましたオチから先に表示される問題や商品紹介が英文になる問題を CreateSpace と Amazon の各部署に問い合わせてまわっていますCreateSpace の親切な担当者のおかげで表紙は正しく表示されるようになりましたそもそも日本語に対応していないサービスに無茶な要求をしている自覚はありますKDP Print が利用できるようになれば配送期間の短縮や支払いの利便性に加えて窓口が一本化されるメリットもあることを知りました

商品ページが解決しないうちに現物が届きました表紙は光沢を選んで正解バーコード位置は下すぎましたデジタル見本と実物では印刷位置にかなり差違があります実物は本文がかなり上にずれて印刷され下の空白が広すぎました追記: CreateSpace 注文分のみの不具合Amazon で購入すればデジタル見本とおなじ位置に印刷されます)。 小さすぎる文字はかすれてしまうようで奥付のルビは読めませんでしたデジタル見本には印刷位置の大きなずれのほかにも、 「画面だと実物とは違って見えるという心理的な問題もありますノンブルを太字にしたのは大失敗でした柱の位置も本文に近すぎます印刷位置のズレについて苦情をいおうかと思いましたがこれも心理的な見え方のせいだといわれたら反論できませんCreateSpace と Amazon の双方に掛け合っている最中なので今さら版を修正して一からやり直しというわけにもいきません次の本から改良します不満は残りますが総じて旧版とは比べものにならないほど本物の本に近づきました

上のほうにずれて印刷されるとか表紙で文字や絵を入れてはいけない範囲が塗り足しとは別に設定されているとかそういったシステム上の癖を踏まえて使いこなせば出版社の商品と遜色ない本がつくれそうですBCCKS はだれでも美しいものがつくれる反面ページ数に折の制約がありますしいちいちウェブのフォームに細かく分割したテキストを流し込んで整形しなければなりませんよそで使い回しがきかない上に集客力もありません国内でもっとも優れたオンデマンドサービスでさえそのありさまです十年前からこの品質のサービスを提供できている CreateSpace は驚異的といえます

CreateSpace に発注して届くまで速達でも二週間かかりますAmazon.co.jp ではどれくらいで届くかわかりません追記:最初の注文は二週間で届きます。 「在庫表示になれば通常商品とおなじ日数で届きます)。 発注からお届けまで数日せめて一週間なら⋯⋯送料に追加料金を要して二週間は厳しいと思います譲歩して 10 日が限度ですすぐに届くのであればサイト上で受注して PayPal で支払いを受けCreateSpace で送付先を客の住所にする手法が試せますが現状ではそれもできません著者割引価格に速達送料を足すと日本の Amazon の価格送料無料を上回ります旧版は 60 円ほどの利益を見込んで 1100 円ほどでした現在の版は利益ゼロであるにもかかわらず差し引きを考えると価格はさほど抑えられていません採算は度外視していますしオンデマンドが高くつくのはやむを得ないとはいえもう少しどうにかならないものでしょうか自宅で印刷・製本する手軽な手段があればいいのにしかし在庫管理や発送の手間まで考えるとやはりオンデマンドサービスにかなうものはありません

実現可能性はさておき取次と契約することを検討しましたしかしそんなにしてまで街の書店に好みでない無数の本のなかの一冊として並べたいでしょうか本のセレクトショップ的な店があれば理想ですが在庫管理リスクや面倒なやりとりを負ってまで利用したいとは思いませんやりたいのは商売ではないのですリスクや手間が生じるような旧来の手法あるいは価値観で本づくりをしたいのであれば素直に新人賞に応募すればいいそれで書店に並ばないのであればその価値観において本にする価値がないということです人格 OverDrive はまったく異なる価値を求めているのでだれも手がけたことのないやり方を開拓する必要があります

では何をやりたいのかネット書店なのか版元なのか人格 OverDrive は何よりもまず先に出版レーベルでありウェブサイトでもあります七年前の設立時からそうでしたし今後も変わりませんどうも理想や実践していることはセルフパブリッシングではなくひとり出版社やリトルプレスのほうが近いようですいわばブラック・スパロウ・プレスのジョン・マーティンになりたいのです

【追記】

Amazon PODKDP PrintCreateSpaceの現状


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。