印刷版の続報です。 CreateSpace にかけあって表紙を商品画像にしてもらったのに、 Look Inside が反映された途端にまた裏表紙へ戻りました。 オチから先に表示される問題や、 商品紹介が英文になる問題を CreateSpace と Amazon の各部署に問い合わせてまわっています。 CreateSpace の親切な担当者のおかげで表紙は正しく表示されるようになりました。 そもそも日本語に対応していないサービスに無茶な要求をしている自覚はあります。 KDP Print が利用できるようになれば、 配送期間の短縮や支払いの利便性に加えて、 窓口が一本化されるメリットもあることを知りました。
商品ページが解決しないうちに現物が届きました。 表紙は光沢を選んで正解。 バーコード位置は下すぎました。 デジタル見本と実物では印刷位置にかなり差違があります。 実物は本文がかなり上にずれて印刷され、 下の空白が広すぎました (追記: CreateSpace 注文分のみの不具合。 Amazon で購入すればデジタル見本とおなじ位置に印刷されます)。 小さすぎる文字はかすれてしまうようで奥付のルビは読めませんでした。 デジタル見本には印刷位置の大きなずれのほかにも、 「画面だと実物とは違って見える」 という心理的な問題もあります。 ノンブルを太字にしたのは大失敗でした。 柱の位置も本文に近すぎます。 印刷位置のズレについて苦情をいおうかと思いましたが、 これも心理的な見え方のせいだといわれたら反論できません。 CreateSpace と Amazon の双方に掛け合っている最中なので、 今さら版を修正して一からやり直しというわけにもいきません。 次の本から改良します。 不満は残りますが総じて旧版とは比べものにならないほど本物の本に近づきました。
上のほうにずれて印刷されるとか、 表紙で文字や絵を入れてはいけない範囲が塗り足しとは別に設定されているとか、 そういったシステム上の癖を踏まえて使いこなせば、 出版社の商品と遜色ない本がつくれそうです。 BCCKS はだれでも美しいものがつくれる反面、 ページ数に折の制約がありますし、 いちいちウェブのフォームに細かく分割したテキストを流し込んで整形しなければなりません。 よそで使い回しがきかない上に集客力もありません。 国内でもっとも優れたオンデマンドサービスでさえそのありさまです。 十年前からこの品質のサービスを提供できている CreateSpace は驚異的といえます。
CreateSpace に発注して届くまで、 速達でも二週間かかります。 Amazon.co.jp ではどれくらいで届くかわかりません (追記:最初の注文は二週間で届きます。 「在庫」 表示になれば通常商品とおなじ日数で届きます)。 発注からお届けまで数日、 せめて一週間なら⋯⋯。 送料に追加料金を要して二週間は厳しいと思います。 譲歩して 10 日が限度です。 すぐに届くのであればサイト上で受注して PayPal で支払いを受け、 CreateSpace で送付先を客の住所にする手法が試せますが、 現状ではそれもできません。 著者割引価格に速達送料を足すと日本の Amazon の価格 (送料無料) を上回ります。 旧版は 60 円ほどの利益を見込んで 1100 円ほどでした。 現在の版は利益ゼロであるにもかかわらず差し引きを考えると価格はさほど抑えられていません。 採算は度外視していますし、 オンデマンドが高くつくのはやむを得ないとはいえ、 もう少しどうにかならないものでしょうか。 自宅で印刷・製本する手軽な手段があればいいのに。 しかし在庫管理や発送の手間まで考えるとやはりオンデマンドサービスにかなうものはありません。
実現可能性はさておき、 取次と契約することを検討しました。 しかしそんなにしてまで街の書店に、 好みでない無数の本のなかの一冊として並べたいでしょうか。 本のセレクトショップ的な店があれば理想ですが、 在庫管理リスクや面倒なやりとりを負ってまで利用したいとは思いません。 やりたいのは商売ではないのです。 リスクや手間が生じるような旧来の手法、 あるいは価値観で本づくりをしたいのであれば、 素直に新人賞に応募すればいい。 それで書店に並ばないのであれば、 その価値観において本にする価値がないということです。 人格 OverDrive はまったく異なる価値を求めているので、 だれも手がけたことのないやり方を開拓する必要があります。
では何をやりたいのか。 ネット書店なのか。 版元なのか。 人格 OverDrive は何よりもまず先に出版レーベルでありウェブサイトでもあります。 七年前の設立時からそうでしたし今後も変わりません。 どうも理想や実践していることはセルフパブリッシングではなく 「ひとり出版社」 やリトルプレスのほうが近いようです。 いわばブラック・スパロウ・プレスのジョン・マーティンになりたいのです。
【追記】