崖っぷちマロの冒険

第3話: おじけ

Avatar photo書いた人: 杜 昌彦, 投稿日時: 2022.08.12

愛される子供は説かれるまでもなく知っている。そうでない子供は自力で学ぶしかない。生命の価値とはそういうものだ。
 パキ教頭は全校生徒に、「悲しいお知らせ」を告げた。「思いがけない事故で亡くなったお友達」について語った。少年犯罪がマスコミを賑わすたび、繰り返される十八番。それをこんなときにまで持ち出した。どう考えてもそぐわない。
 おそらく彼も途方に暮れていたのだ。対岸の火事であるうちはよかった。それまで教えてきたことの浅薄さに、呑み込まれて初めて気づく。修正するにはあまりに長く口にしすぎた。だから始終、マイク角度を気にした。拡声器が水を注すように共鳴した。広げた話をまとめきれないまま、苦い顔で降壇した。
 教員たちの半数は、痛々しいものを見た顔をしていた。残りは体を揺すり、視線をさまよわせていた。話が終わったときには、全員が見るからに安堵していた。
 同学年の女子たちは嗚咽していた。あたかも親交があったかのようだ。お嬢を知るはずのない子まで啜り泣いていた。低学年の連中はポカンとしていた。空を眺めたり、爪先で砂をつついたり。感受性の強い子が、意味もわからずに泣きだした。
 お嬢が見たら冷笑したろう。そしてすぐ本へ視線を戻したに違いない。風が冷たかった。校庭に立ちっぱなしで疲れた。何度も欠伸が漏れた。丸一日、学級会で潰れるだろうと思った。故人の想い出を語り合い、追悼の作文を書かされるのだ。
 そうはならなかった。
 機関銃のような解説、消されては埋め尽くされる板書。質問と補足説明の集中砲火。誰ひとり脱落さえ許されない。生徒は熱病のように挙手を競い合う。板書を写す鉛筆はノートに火をつけんばかり。巧みに織り込まれる冗談に、教室は頭に火がついたように爆笑する。
 異様だった。
 鐘が鳴り、担任は退室した。誰もが机にぐったり伏せた。窓際の空席を意識しつつも、噂を囁きあう気力さえなかった。空の色と同じように重苦しい雰囲気だった。
 間延びした声が静寂を破った。「あのさあ、ニュース観た?」
 教室中がのろのろと振り向いた。誰もが眼の下に隈ができていた。声の主はユーチャンこと斉藤祐太だった。身体測定のあと、必ず保健室に呼ばれる肥満児だ。
「連続小学生連れ去り事件。車に無理やり乗せるんだってぇ」
「黙れよデブ」
 タカケンが端的にいった。ユーチャンは傷つき、ぶすっとした。
 鉛筆は五本とも潰れていた。消費者金融のティッシュを広げ、机の物入れを探った。父の教育方針で、シャープペンも鉛筆削りも持っていなかった。奥でくしゃくしゃになったプリントを引っかきまわす。覗き込み、中身を抜き出した。椅子の上であらためる。
 血の気がひいた。
 机の中身を戻し、椅子に座り直した。鼓動が速まった。
 隣の志穂は、地味でおとなしかった。鉛筆削りを貸してくれと頼んだ。彼女はまるでいやらしいことでも頼まれたみたいに頬を染め、小さく頷いた。手渡された代物に、後ろめたい気分で鉛筆を挿入した。不穏な可能性は考えないようにした。
 次は社会科だった。鐘と同時に担任が現れ、教室はドーピングされた猿の群れのようになった。長介でさえひと言も噛まずに、教科書を読み上げた。ブツッという雑音がその声を遮った。ピンポンパンポン……黒板の上のスピーカーだ。
「五年二組の縁部丸夫君。至急職員室まで来てください」
 教室に真空が生じた。高負荷時に急に割り込まれ、処理が停滞したのだ。砂の流れるような雑音のなかで教頭の声が響いた。
「繰り返します。五年二組の——
 放送が終わるなり、熱い視線がいっせいに突き刺さった。後ろの戸口に近いタカケンが、『名探偵コナン』の主題曲を口ずさんだ。
「行け、マロGO!」
 ブラジルは僕の表情を見ていた。「行きなさい。遅れた分は質問に来ればいい」
 職員室に顔を出すと、山本が席から腰を浮かした。落ちつかぬ身ぶりで、応接室の扉を示す。
 教頭は後退した額を、ハンカチで拭いていた。僕が入室すると、とがめるような眼で振り向いた。到着が少しでも遅れていたら、彼は緊張で死んでいたろう。
 飯沢警部は合成皮革の黒ソファーに浅く腰かけ、膝に両肘をついて、手をあいだに垂らしていた。低いテーブルには手つかずのお茶。鋭い視線が、おもむろに僕を射抜いた。
「よう、マロ君」
「どうも。こんちは」
 僕の興味は、もうひとりに引きつけられた——というか、その髪型に。殺害現場で携帯にがなりたて、教室で窓を眺めてた、三十代なかばの刑事だ。それはただの寝癖ではなかった。スネ夫の髪型そっくりなのだ。彼は膝の上で手帳をひらき、ボールペンを構えた。
 僕は促されて教頭の隣に座った。トポロジー現象に気をとられ、予想できたはずの質問に動揺した。
「最近、何かなくさなかったか」
 警部は身じろぎひとつしなかった。スネ夫頭はペンを構え、醒めた眼で辛抱づよく見つめてきた。教頭はまるで、教会に紛れ込んだ宴会客だった。警官たちと生徒とを、心許なげに見較べた。派手な喧嘩で知られる頭突き竜だが、案外臆病だったのかも。そんなことを思った。
「僕のだったんですね。小刀」読みとれるような反応はなかった。警官たちは無言だった。「なんで昨日、訊かなかったんです?」
「名前シールが血で読めなかった」
 見えすいた嘘に思えた。だがそんなことをする理由がわからない。古びたソファーは座り心地が悪かった。尻を動かすと耳障りな音がした。「……僕はやってない」
「え?」
 愚痴だって黙って聞いた。母さんは自業自得だ。「できるなら助けたかった。僕のせいじゃない」
「犯人だなんて誰がいった」飯沢警部の眼には面白がるような色があった。スネ夫頭は表情を見せない。ロボトミー手術でも受けたみたいだった。
「お嬢は下から刺されてた。背の低い奴にやられたんです。ちょうど僕ぐらいの」
 警部は僕を見つめた。ひどい世界を見すぎて、皮肉さえ忘れた顔だった。「評判を聞いたよ。名探偵なんだって?」
「それはみんなが勝手に……」
「いつだね。小刀をなくしたのに気づいたのは」子供相手の気さくな調子は消えていた。
「ついさっき。鉛筆削ろうとしたら消えてた。きっと長縄といっしょに盗られたんだ。机の中に入れっぱなしだったんです」
「どうして君のなんだろう」
「さあ……罪をなすりつけられる謂れなんて。マイムマイムで女の子と手をつなぐ前は、必ずズボンで汗を拭くし。プロレスで誰かを怪我させたこともない。ビー玉やメンコを巻き上げたことだって。たまたまじゃないですか」
 警部は関心を失ったように見えた。相棒へ頷きかける。スネ夫頭は手帳を閉じ、懐にしまった。警部は立ち上がりながら、ふと思いついたように尋ねた。いかにもついでのように。
「被害者の遺体だが。君が発見したとき、どんな状態だった」
「どんなって?」
「我々が到着するまで、動かしたりしなかったかね」
「誰がいじりたがります? 例え好きだった子でも」
「それを査べるのが我々の仕事だよ」
 警部は教頭に礼をいい、戸口へ向かった。スネ夫頭が続いた。教頭はソファーから跳びだし、何度もお辞儀した。水呑み鳥の玩具みたいだった。
「待って。ひとつだけ教えてください」
 ふたりは振り向いた。教頭は泣きそうな顔で僕を見た。警部は静かにいった。「捜査のことなら何も教えられない」
「そちらの刑事さんの名前は」
 尾根河だとスネ夫頭は答えた。僕は彼の顔を見つめた。
 警部は困惑顔でうめいた。「どうしてみんな驚くんだ」
「もう諦めてますよ」スネ夫頭は哀しげにいった。見た眼より若い声だった。ふたりは応接室を出ていった。
 会見の内容は校内に知れ渡った。便所と称して教室を抜け出し、立ち聞きした生徒でもいたのだろう。噂は雪だるま式に膨れあがった。あいつが刺したらしい。ストーカーだったんだって。勝手に持ち上げておきながら掌を返す。落差が大きいほど祭りは盛り上がる。探偵としての名声は、急速に失墜した。
 同級生は遠巻きに白い眼で見つめた。全教室から偵察が派遣され、戸口に野次馬が群がった。休み時間に席を立つと、空気が緊迫した。通り道にいた者は身をこわばらせた。短い悲鳴もあがる。廊下では野次馬の海が裂けた。
 便所ではひと騒ぎあった。慌てて飛び出す者、動揺して狙いを損ねる者。個室からは慌てて巻紙を引き出す音がした。
 戻ってきたら隣の机が数センチ離れていた。志穂は人形みたいに固まっていた。噛みしめた唇が色を失っている。涙目だった。僕はため息をついた。
 帰りの会で担任は、児童連れ去り事件について話した。人目につかない場所や、よく知らない大人への注意を促した。普段と変わりない態度だった。まるで刺殺された生徒など、初めから存在しなかったかのよう。拍子抜けの気分が教室に漂った。あえて質問する勇気は誰にもなかった。空席の欠落感が教室を支配していた。そしてその雰囲気を、ブラジルは確実に支配していた。
 班の連中は、僕に掃除を押しつけて逃げた。階段掃除を終えて図書館へ向かった。晴彦はうずくまって犬の糞を観察していた。顔を輝かせ、飛び跳ねながらついてくる。空き箱で飼育中のカナヘビについて、耳元でまくしたてた。死体を目撃した記憶は抜け落ちたみたいだった。
 新聞コーナーで、地方紙の朝刊をひらいた。四コマ漫画の下に出ていた。
「『女児 図工用小刀で死亡』
 昨日午後三時ごろ、青葉小学校の敷地内で、女児の刺殺体が発見された。女児は工作用の小刀を胸に刺されていた。女児はこの小学校の五年生で、テライ食品社長寺井友之助さん( 47 )の長女、玲子さん( 11 )。中央署では詳しい事情を調べている」
 何度も読み返した。これだけだった。全国紙の県内版も確かめた。親についての説明がないだけで、大差なかった。
 雑誌コーナーの椅子で、グラビア書評誌をひらいた。流行モデルが推理小説を紹介していた。洗練された死は僕の知るものとは似ても似つかなかった。晴彦には文芸誌の官能特集号を与えた。漢字が読めない彼のため、読み方を何度も教える羽目となった。退屈した彼は雑誌を隣席へ放り出した。
 僕は鞄を足許に置いていた。ロッカーは閉鎖されていた。年配の男性利用者が若い女性を脅かしたからだ。分別盛りの彼らはいい手本になった。晴彦は荷物でまわりの席を独占していた。
「ねえねえそれでねカナヘビはねー」
 玄関脇には市民サークルの水墨画が飾ってあった。チューリップ帽の男が、出入りする全員に話しかけていた。「はは、布袋様がこんなとこでくすぶってら!」
 資料調査カウンターでは、リュックを背負った青年が長話をしていた。頭頂部を糸で引っ張られてるような、奇妙な動き。内容は支離滅裂で意味をなさなかった。職員たちが寛大に対処していた。
 胸に工務店名が刺繍されたジャンパーの初老男が、新聞コーナーを占領していた。短い脚を組み、新聞を大きく広げていた。座ろうとする若い女性を睨みつけた。
 僕は読書誌を読んでいた。座談会の誌面に影が落ち、顔をあげた。おばちゃん職員が、腰に両手をあてて仁王立ちしていた。厳めしい顔で、人差指を口に当ててみせた。
「お静かに。ほかの利用者の迷惑ですよ」
 注意しやすい子供を口実にして、周囲をたしなめたかったのだろう。咎めだての視線が集中した。まったく近ごろの子供は……。僕は謝り、雑誌を戻して鞄を背負った。晴彦にも身支度させ、手を引いて外へ出た。通りに出るなり振り払い、歩調を早めた。晴彦は一瞬キョトンとしただけで追いついた。
「それでねーそしたらねー」彼は僕の耳元でまくしたてた。答えずにいると顔を覗き込まれた。「そしたらねー」
 銀杏ロードの交通量は、この日はなぜか少なかった。背後に迫る高級車には気づかなかった。いきなりドアがひらき、袖を掴まれて車中へ引き込まれた。立ちすくむ晴彦が垣間見え、彼の鼻先でドアが閉じた。鼓膜が金属的に鳴った。車は再び滑りだした。ほとんど音を立てなかった。
 生暖かい息が顔にかかった。黄金色の眼と視線があった。黒豹の仔だった。赤い頸輪をつけていた。
「いつまでそこで寝てるつもり?」舌足らずの声。
 僕は体を起こし、獣を膝に乗せた女の子と向き直った。
 六歳くらいか。黒い制服と制帽は、聖愛女学院初等部のものだった。まっすぐな肩までの髪。黒タイツに丸い革靴。大きな眼とふっくらした頬が、フランス人形を思わせた。
 車内は広く、身を遠ざけるのに充分な空間があった。初老の運転手は、拉致が日常業務であるかのように落ち着きはらっていた。革と樫材の内装。座席は柔らかく、体を包み込むようだった。スモークガラス越しに景色が流れていた。
 僕は鞄を前に抱え、黒豹の攻撃に備えた。「あー、質問いいかな。山ほどあるけど……」
「あたしは後藤杏。寺井玲子の妹」
「お姉さんに聞いた。お母さんについた子か」
「ひどい」
「こんな目に遭ってみろ。口も悪くなる」
「名前は父がつけたの。髪が赤っぽいから。今は染めた。校則で」
 幼い口が発する言葉は、非現実的でそぐわなかった。声優のアテレコを思わせた。彼女はペットの喉を掻いた。黒豹は僕を睨んで低く唸っていた。手をかけられてるのが毛並みでわかった。
「可愛いでしょ。雌猫なの。ピエール瀧」
「は?」
「この子の名前。棒アイスが好きなの。あなたが気に入ったみたい」
「目的は? 金持ちが貧民を誘拐するなんて」
「仕事を頼みたいの」
「はあ?」
「名探偵マロ。あなたのことでしょ。聖愛でも評判」
 僕はまじまじと相手を見つめた。こましゃくれた態度に騙された。やはりまだ現実とアニメを混同する年齢なのだ。
「失せものを二度ばかり見つけただけだ。それをみんなが面白おかしく誇張した。ばからしい……」
「うちの家族についてどれくらい知ってる?」
「金持で、美人の長女が殺された。妹は変人」
「パパについては知ってるわね。ママは『後藤凉子デザイン事務所』の経営者。三年前、あたしと梶山を連れて離婚した。姉はパパのとこに残った。お祖父さんはテライ食品の名誉顧問。引退したの。変わり者だけどいい人よ。バラバラに暮らしていても、みんな大事な家族。ママは仕事も手につかないで自分を責めてる。どんなに争ってでも姉を手放さなきゃよかったって」
「気の毒だった」
「姉を見つけてくれたんでしょ。飯沢警部が母に話すのを聞いた」
「案外お喋りだな、あの人」
「状況を詳しく教えて」
「お嬢とは図書館でよく顔を合わせた。親しくはなかった。なのにあの日、放課後に呼び出された。掃除を終えて体育館の裏へ行った。彼女は樹に縛りつけられてた。胸には小刀が。もう冷たくなってた」
「拳をあげてたって聞いたけど」
「君の方が詳しそうだ」
「異常者の犯行ね。そう思わない? 殺してから縛るなんて」
「なぜその順序だとわかる。それも警部が?」
「抵抗した形跡はなかったって。知ってる人だったのかも。変な格好でくくりつけたのには意味がある。きっと現場にメッセージを残したのよ。一種の犯行声明ね。でなきゃ死体に呪われないための魔よけとか。犯人にはこだわりがあるのかも。本人にしか理解できないような」
「君、何年生?」
「一年。あなた何か隠してない?」
「四つ下か。信じらんないね。隠すって?」
「メッセージにしては変よ。わかりにくい」
「相手は異常者だぞ。まじないか何かだろ」
 四つの眼に睨まれた。ピエール瀧はおまけに牙を剥き出していた。運転手の助けは期待できない。僕はついにブラジルの隠蔽工作をバラした。後藤杏は動じなかった。あどけない顔の強情な色に、そのとき初めて気づいた。確かにお嬢の妹だった。
「そんなことだろうと思った。それならしっくりする。『悔しかったらこの謎を解いてみろ』って挑発ね。警察への、それとも——
「いつそう決まった? 『魔よけかも』って自分でいったろ」
「待ち合わせの約束だけど。ほかに知ってた人は?」
「いや……でも独りになるまで尾けることは、誰にもできた」
「姉との関係を知ってた人は?」
「『関係』ね……。晴彦と担任かな。あと図書館の人。ブラジルとにはアリバイがある。それにやったのは子供だ」僕は小刀の角度について説明した。
「動機に心当たりは?」
「知るか。中山仁美が被害者なら、偏執的なファンを疑うけど。お嬢はああいうアイドルって柄じゃなかった」
「あたしたち家族は何も知らなかった。あなただけなのよ。姉の悩みに気づいたのは」
 僕は黙り込んだ。
「あたしにはわかる。メッセージはあなた宛よ。図書館で一緒にいるのを見られた。それで待ち合わせ相手だとバレたのよ。挑発されて黙ってるの?」
 僕の視線はピエール瀧に釘づけだった。鋭い牙と爪。背中を弓形にし、毛を逆立てていた。今にも飼い主の手を離れ、飛びかかってきそうだ。鞄はたいした防御になりそうもない。
「今日はどうしちゃったの? いつもおとなしいのに……」
「どうしろってんだ。ただの小学生に何ができる」僕の声は悲鳴に近かった。
「犯人を見つけて。推理で警察に協力するのよ」
「いったろ。ただのごっこ遊びだって」
「犯人、捕まえたくないの?」
「私からもお願いいたします」
 だしぬけに運転手が口をきいた。ミラーごしに眼鏡と視線が合う。誠実そうな太い眉、口ひげと七三に分けた髪は灰色だった。高級そうなダーク・スーツ。教団に出入りする政治家の秘書もそんなのを着ていた。あの連中より古風で品がいい。
「子供のわがままを助長させてどうすんです。甘やかし過ぎじゃないですか」
 穏やかで哀しげなまなざしは僕に訴えていた。調子を合わせるようにと。その瞳の底に影が見えた気がした。家庭の混乱に苦しむ少女の影が。拒むことはできなかった。
 僕はまだほんの子供だった。暗がりを照らせば何が現れるか、充分に学んでいなかった。お嬢に関心を抱いた時点で、すでに深入りしすぎていたのだ。銃口は少なくとも、四人の後頭部に突きつけられていた。無知はいいわけにならない。
 ベトナムに関する古い唄に、こんなのがある。
 僕は世界の忘れられた子。照らし出しては殲滅する。


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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