杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第45回: 夢想の実践

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
04.13Thu

夢想の実践

Amazon はいずれ自前のオーサリングツールを用意するだろうと考えていました予測通りのニュースを知ってこのところ Word 入稿のアピールが強かった理由がわかりましたKDP だけではなく CreateSpace も Word で版下をつくることを推奨しています縦書きなどの日本語対応には期待できませんKindle Create ばかりではなくCreateSpace も KDP Print も Kindle instant preview も何もかもが未対応ですとはいえ彼らの目指すものは日本で提供されている機能制限版でも同じでしょうアフィリエイトの仕組みを整えて客が勝手に広告するよう仕向けたのと同じように出版の敷居を極限まで低くすることで生態系の裾野を広げ生産者から消費者まで囲い込みたいのだと思います

その試みが成功して実現するのはどのような世界でしょうか読書は孤独な行為であり芸術は孤独なひとへの言葉ですEC や SNS のアルゴリズムは利益と効率を最大化することで孤独とは相容れないものを極限まで拡大します醜いものほどコンバージョンしますし売りやすいものばかりを売ればそれ以外のものを淘汰してなお売りやすくなりますそのようにしてコンバージョンこそが出逢いの機会ランキング表示や関連づけなどをつくりますEC や SNS のアルゴリズムと親和性がある文化は孤独のための言葉を埋もれさせますそこではだれもが普通でなければなりません

ebook のユーザは漫画やアニメゲームやデジタルガジェットの愛好家がまだまだ多い印象がありますGoogle の区分でいえばBooks & Literature/E-BooksではなくArts & Entertainment/Comics & Animation/Anime & Mangaを好む層ですあるいは ebook にかぎらず読書そのものが変質したのかもしれませんこの 20年間で出版社があるいは印刷物を介した金融業のような彼らのアルゴリズムが育ててきたのはそういう読者層です。 「本屋大賞はすでに売れているものしか選ばないわざわざやる意味があるのかといった意見をしばしば耳にします二回目の時点ですでに同じ指摘がされていました若い書店員もまた独自の視点や多様な価値それらをつなげる文脈に出逢う機会がなかった世代なのです

ひとの好みは自由です世間の好みがどうあれ本好きもまた自由にやればいいのです一冊の価値やいかに読むかの視点本と本をつなぐ文脈を提示し広める必要がありますそうすればいずれはアルゴリズムも価値や文脈を学習し表示精度を向上させます嘆いていても仕方がありません本と本をつなげて出逢いの機会をつくらなければこのサイトはそのための実践の場です当レーベルが今何をしているのかこれから何をしようとしているのかを脳内会議でストリーミングします分量が溜まれば日記に日記が溜まれば単行本にまとめますそれらの思考の成果物として小説の ebook やペイパーバックを出版していきます


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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