すばらしい新世界
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すばらしい新世界

西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、フリーセックスの奨励、快楽薬の配給によって、人類は不満と無縁の安定社会を築いていた。だが、時代の異端児たちと未開社会から来たジョンは、世界に疑問を抱き始め……驚くべき洞察力で描かれた、ディストピア小説の決定版!

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低身長マウント男のミソジニーな冒険譚

読んだ人:杜 昌彦

すばらしい新世界

AI と戦争と The Beatles について書く準備で手に取った幻覚剤が流行した時代にジョンとジョージが読んだ作家なので参考にはならなかった猛烈な眠気とたたかいながら読み終えたただ古いだけの稚拙で不快な小説だった1930 年代知的階級の白人男性らしい傲慢さを感じた翌年公開の映画キングコングさながらの文明社会に連れてこられた未開人が起こす騒動というプロットは不自然だった。 「文明人未開の集落を訪れる必然性がないそれが許される社会なら観光地として整備され商業化されているはずなのにそうではないあるいは幼少期のジェイムズ・ティプトリー・ジュニアが両親に海外の植民地を連れまわされゴリラを見た最初の白人女性となった逸話からも推察されるように裕福な白人が危険な地域を観光として訪れるのは当時としては違和感のない描写だったのだろうか児童虐待はそれなりに書かれているが主題を明確にする役には立っていない何より女性を性的で愚かなモノとしてのみ捉える価値観は 2024 年に読むべきものではなかったやたら DV 場面がつづくし女たちは逃避で薬漬け家父長制を対象化し批判する視点ではなく明らかにそのなかにあって書かれている——あたかも家庭は本来そのようなものであるかのようにアメリカ原住民の集落を訪れるくだりの差別的なまなざしは 60 年代英国人にとってのインドなのか作中の不幸な女性に北朝鮮や昨年 10 月 7 日ハマスの拉致を連想したおもしろい箇所もないではない自分の考えを持つ危険から読書が罰される描写はソーシャルメディアを思わせるし初期の睡眠学習のくだりは AI のハルシネーションのようだ社会の同調圧力から抜け出そうとする低身長男が女を連れまわして幼稚なマウントをかましつづけるミソジニーは現代のインセルさながら実際この作家はティモシー・リアリーを通じてインターネットと無縁ではない総じていい部分も悪い部分も現代と似ていてそういう意味では予言的といえなくもないだからといって読む価値はなかった1930 年代知的階級白人男性の性的夢想を知るにはいい本かもしれない

(2024年01月20日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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オルダス・ハクスリー
1894年7月26日 - 1963年11月22日

英国の作家。『知覚の扉』は60年代の意識革命の発端として評価が高く、ハーバード大学の幻覚剤研究者であるティモシー・リアリーの理論の主柱となり、リアリーの後継的な存在であるテレンス・マッケナにも大きく影響を与えた。 ジョン・C・リリーもハクスリーの著作に強い影響を受けている。

オルダス・ハクスリーの本