すばらしい新世界
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すばらしい新世界

すべてを破壊した“九年戦争”の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた。あらゆる問題は消え、幸福が実現されたこの美しい世界で、孤独をかこっていた青年バーナードは、休暇で出かけた保護区で野人ジョンに出会う。すべてのディストピア小説の源流にして不朽の名作、新訳版!

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著者: オルダス・ハクスリー

(1894年7月26日 - 1963年11月22日)英国の作家。1916年に初の詩集となる『燃える車輪』を、1921年には初の長篇『クローム・イエロー』を刊行。以降も小説や評論を発表し続け、1932年に『すばらしい新世界』を刊行。オーウェル『一九八四年』と並ぶディストピア文学の祖として、現代にいたるまでさまざまな作品へ強い影響を及ぼしている。1963年没

オルダス・ハクスリーの本
2020.
09.02Wed

すばらしい新世界

どういった環境下で育つかで、信じるものが変わる。人間というのはおそろしく複雑なようでいて、おそろしく単純なようだ。

 伊藤計劃の『ハーモニー』を読んだときにも感じたことだが、手段こそ私が今生きている現代の人間の価値観ではかるなら、それは非人道的であり、倫理にもとる所業だと痛烈に批難する言葉が浮かぶ。しかし、その手段に至るまでのプロセスや動機が明らかにされたとき、その理由の「まともさ」から、「完全にコントロールされた生活」へ疑義を唱える勢いは急速に衰えてしまう。

 『すばらしい新世界』が目指したのは、科学の暴走による九年戦争によって殺し合いを演じた人類への反省の歴史から学び得たものであり、争いのない「しあわせ」な人類を築くためには、こうすることが最適解だったと判断した上での超管理社会なのだ。
 少なくとも描かれている範囲内には、それらの頂点に君臨し、搾取している人間はいない。ヒエラルキーに属するすべての人類が一丸となって、この目的を遂行するために動いている。(その事実は上層の一部しか知る由のないことだが)
 そしてそれは、事実を知らない下層の人間たちにとっても(とってこそ)「しあわせ」の代価であり、知らなくとも「こうふく」に生き、死んでいくことができる。(仮にそこに馴染めなかった人間のための居場所も用意されているというのだから驚く)
 私はひょっとすると、「理念」にさえ納得できれば、体制にも個人にも跪くのかもしれない。御冷ミァハの理念を知ったときがそうだったように。

 しかし私らが生きている現実はどうだ?国際ジャーナリストの堤未果氏の言葉を借りれば「今だけ、金だけ、自分だけ」の利己的な人間による支配が世界を牛耳っており、その傾向はいや増すばかりだ。
 オルダス・ハクスリーの描く『すばらしい新世界』のほうが、よほど可愛げがあると思えてしまうほど、現実のほうがよほどディストピアめいていてゾッとする。


趣味でしかものを書いたことのない、名無しの素人エッセイスト(自称)。 この度、どういうわけか当サイト「人格OverDrive」の主宰者である杜 昌彦氏に「掲載してみませんか」とお誘いいただき、こちらに寄稿することに。 29年間、苦しそうなこと、辛そうなことから逃亡している人生。フリーター。 寄稿するジャンルは妄想エッセイ。虚実交えた物語を書いていきたいと思います。
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