ベル・カント
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ベル・カント

南米のとある小国。副大統領邸では、日本企業の社長ホソカワの誕生パーティが開かれていた。特別ゲストの世界的オペラ歌手ロクサーヌが歌い終えた瞬間、武装したゲリラがなだれ込んでくる。副大統領邸は反政府組織に占拠されてしまったのだ。膠着状態が続くうち、ゲリラと人質の間には奇妙な絆が生まれ、彼らはその状況に幸せすら感じるようになるが…極限状態で生まれる心の交流を描く傑作。オレンジ小説賞、PEN/フォークナー賞受賞作。


¥1,364
早川書房 2019年, 文庫 528頁
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読んだ人:杜 昌彦

ベル・カント

雑っ! と思わず叫んだこれほど残念な本にはそう出逢えるものではない前半はよかった若干の不満はこれはファンタジーであって政治謀略小説ではないのだからと自分に言い聞かせて乗り切ったしかし中盤の転換点から急激にひどくなり弁護の余地がなくなったそれで序盤から感じていたモヤモヤに説明がついた在ペルー日本大使公邸占拠事件に着想を得たとされているが要するにこの本はローティーン向けの幼稚で甘ったるい恋愛幻想のための舞台装置というか安っぽい書き割りとして都合のいい設定を利用しただけなのだだからこの小説では搾取する側のさらにいえば裕福な白人視点ばかりが活き活きと描かれる虐げられる民衆の側はせいぜい金持の白人にとって理解できる部分だけが描写されるのみだそもそもがオペラである育ちのいい金持向けの娯楽だ残酷かつ腹立たしいことに  民衆の音楽フォルクローレは下賎の娯楽として蔑まれ嘲笑される日本人の描かれようはなるほどアップデートされたかもしれないサムライハラキリニンジャゲイシャでも哀しくも死語となったエコノミックアニマルでもない代わりに村上春樹の稚拙な模倣だ本物は団塊世代の暴力性を意識的にせよ無自覚にせよいかにも正しいもののように語るがそういう異常性はもちろん見られないその異常性に日常的に触れる機会のない外側のひとびとにはそこまで読みとれないのだ金持の白人が理解するであろう都合のいい村上春樹っぽい日本人が語られるのみである同じ白人のあいだでさえも差別があるフランスの文化は滑稽に貶められるしロシア人は愚かな引き立て役だそもそも主役の歌手からして男たちに愛される対象としてのみ描かれる時点で差別が内在化されているそのことにあまりにも無自覚ではないか徹頭徹尾どこまでも差別的に書かれた小説なのだそうでさえなければあらゆる瑕疵に目をつぶっていいんだよやりたかったのは 90 年頃のコバルト文庫みたいなやつなんだろうからと考えることもできたろうとにかく前半はいいのである多くの文章に胸を打たれたそれだけに裏切られた衝撃と痛手が大きいのであるあのまま最後まで差別構造に気づかせずに騙し通してほしかった評価したみなさんは騙されていますよよろしいですかこの小説は下手です較べたら正直ぼっちの帝国のほうが優れているこんなのでフォークナー賞が獲れるのか英語で書けるやつはいいなと羨望した⋯⋯しかしこの記事のために著者の画像を検索していてすべてを許す気になった多くの写真が美しい書店で撮られている彼女の経営する店らしいあのように美しい書店であのように幸せそうな犬とあのようにすばらしい笑顔で写真に収まれる人物であればしょうがない差別的に思えた本も無知ゆえのファンタジーなのだからと微笑ましく思えた

(2019年12月10日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


アン・パチェット
1963年12月2日 -

米国の作家。在学中に初の長編が有名文芸誌「パリス・レビュー」に掲載されるなど、早くから頭角を現す。2002年長編第4作の「ベル・カント」(2001年)でPEN/フォークナー賞、オレンジ賞を受賞。2011年在住するナッシュビルで書店を開業。著書に『密林の夢』など。

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