彼の本でどれか一冊薦めるならだんぜんこの本。 読み返してから書くつもりだったのですが、 先延ばしにしてばかりで、 いつになるかわからないので、 四半世紀前の記憶を頼りに書くことにしました。 職業作家になろうとしていた時期、 当時刊行されていた彼の長編はほとんど読んだのですが (『呪われた街』 だけ図書館の本があまりに汚かったので未読)、 そのうちでいちばん好きです。 書くことについての話だからでしょうね。 書けなくなった作家が泣きながら Word のショートカットを PowerBook G3 (だったと思う、 たしか) のゴミ箱に放り込む場面が印象に残っています。 おれたちの国はかつてよそのひとたちや、 よそから連れてきたひとたちにひどいことをしたわけですが、 米国にもそのようなことがあって (もともと住んでいたひとがいた土地ですからね)、 その恨みが亡霊となることがあるんだなと、 この本ではじめて知りました。 だれもが視線をそらして 「なかったこと」 にする話題を、 真っ向から書くのが彼の好きなところです。 野球帽かぶった米国白人でありながら、 いや、 だからこそなのかな? この時期の彼はたぶんアーヴィングに憧れていたのではないかと思いますし、 当時、 村上春樹は、 アーヴィングに影響を受けた彼を意識していたようにおれは感じました。 『ねじまき鳥クロニクル』 とか、 それっぽくないすか? 語り口についてはそうだけれど、 でも、 都合の悪いことに向き合える作家は、 この国にはそんなにいないような気がします。 だからこその王なんじゃないかな。 それにしても、 生まれた子どもが社会人になるくらいの歳月がすぎたんですね。 内容を忘れていてもしょうがないな。
ASIN: 4105019058
骨の袋
by: スティーヴン・キング
ある暑い夏の昼下がり、妻が死んだ。最愛の妻を襲った、あっけない、なんのへんてつもない死。切望していた子供を授からぬまま、遺されたベストセラー作家のわたし=マイク・ヌーナンは書けなくなり、メイン州デリーの自宅で一人、クロスワード・パズルに没頭する。最後に妻が買ったもの―妊娠検査薬。なぜ。澱のように溜まっていく疑い、夜毎の悪夢。作家は湖畔の別荘を思い出し、吸い寄せられるように、逃れるように妻との美しい思い出が宿る場所、“セーラは笑う”へと向かう。そこでわたしを待っていた一人の少女が、すべての運命を変えていく―。『グリーン・マイル』のスティーヴン・キングが圧倒的な筆力で描く、哀切なまでに美しい、重量級のゴースト・ラヴ・ストーリー。
¥551
新潮社 2000年, 単行本 329頁
特集: 書かれなかった物語, オールタイム・ベスト50
※価格はこのページが表示された時点での価格であり、変更される場合があります。商品の販売においては、購入の時点で Amazon.co.jp に表示されている価格の情報が適用されます。
いちばん好き
読んだ人:杜 昌彦
(2022年09月26日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『骨の袋』の次にはこれを読め!