妄想中年日記

連載第206回: Back to Black

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦
2019.
07.27Sat

Back to Black

どなたかが当サイト経由でお買い物をしてくださったおかげで「本の網」の表示が復活した。感謝。プッシュ通知のプラグインが更新で不具合を出したので衝動的に削除した。これまでそれ経由で訪問されていた方はもうしわけない。今後は通知が届きません。海外では音楽でも出版でもいかにメール配信の登録をしてもらうかで存続が決まる時代だ。本来は当サイトもそのようにすべきなのはわかっているけれども、なんとなく二の足を踏んでいる。本の売れ行きはストアでの露出次第で、ストアの露出はアルゴリズムに気に入られるかで決まる。人格OverDriveの本はインターネットに適性がない。ストアでは圧倒的に不利だ。もし仮にクリックされやすく調整されたところで客層が絶望的に合わない。とんちんかんな低評価レビューがつくばかりでいいことはひとつもない。あるべき客層に届ける工夫をせねばならない。それはストアでは不可能だ。ほかの場に導線をつくらねばならない。そのハブとなるのが人格OverDriveのウェブサイトで、しかしそこに集客力はない。望む客層に向けて広告を打ち、集客した上で配信登録してもらい、つねに関心を持ってもらうのがおそらく唯一の道だ。それができていない。まず効果を出せる水準で広告を出しつづける経済的体力がない。次にサブスクライブのノウハウがない。極端な話、更新通知をメールするだけでもよかろうと思うがそれではつまらないと欲を出してしまう。BuddyPressでファンサイト化する案もあったが他人の気配がないからこそ自由に書ける場であることを思えばさあやろうという気にはならない。そもそも他人と積極的に関わっていい結果になったためしがない。出版物がサイトで目にとまりやすく、また意識してもらいやすくするためには頻繁に出版しつづけることが重要だが、あいにく五ヶ月で470枚書くのが精いっぱいのありさまだ。人格OverDriveを出版レーベルとして認識してもらえればそれでいいので才能のある他人を集めて連載してもらうのが理想だが他人と関わりたくないし資金もない。ボランティアベースでうまくいかないのは実証済みだ。とにかく客層の改善をはからねばならない、適切な客筋を見いだせねばならない、それはわかっているのだが手段が見つからない。『ぼっちの帝国』は次の一章を書けば第二幕が終わり、第三幕に移る。発達障害について書いていることを予定よりも露骨に前面に出しているがこれは他人様から女として共感できないと評されたからだ。女性を書いていたつもりはなかったが「本物」の女性からは七輪の刺青のように見えたらしい。黒人でないのを恥じて猫背で演奏したビル・エヴァンスのような心境になりそのような誤解を与えたのはなぜだろうと考えた。発達障害のことは健常者には理解できないので人間として共感できないとなじられるのならわかる。おそらく実際はそのようなことなのだろうが文化的搾取のように見られたのは何を書いているかが見えにくかったからだろうと考えた。そこでこれは女の話なんかじゃないことを明確にした。「本物」ではないひとたちの話だ。彼らはあなたがたのようには一生なれない。なれなくてもそれなりに愉快にやっていく権利はあるのではないか、あなたがたの目障りにならずに密やかにやっていく方策はあるのではないか。という話を書いている。たぶんこの小説は世の中のさまざまなことからはじき出されたひとびとに読まれなければならない。ただそのひとたちに届ける手段がない。書き出しの頃は上機嫌で毎日書いていたが近頃では書けば書くほど鬱になる。書き終えねばならないのはわかっている。ある種の負債だからだ。完済せねばならない。あと160枚程度だ。どうせ自分しか読まないのだが。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国