D.I.Y.出版日誌

連載第204回: Back to Black

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2019.
07.27Sat

Back to Black

どなたかが当サイト経由でお買い物をしてくださったおかげで本の網の表示が復活した感謝プッシュ通知のプラグインが更新で不具合を出したので衝動的に削除したこれまでそれ経由で訪問されていた方はもうしわけない今後は通知が届きません海外では音楽でも出版でもいかにメール配信の登録をしてもらうかで存続が決まる時代だ本来は当サイトもそのようにすべきなのはわかっているけれどもなんとなく二の足を踏んでいる本の売れ行きはストアでの露出次第でストアの露出はアルゴリズムに気に入られるかで決まる人格 OverDrive の本はインターネットに適性がないストアでは圧倒的に不利だもし仮にクリックされやすく調整されたところで客層が絶望的に合わないとんちんかんな低評価レビューがつくばかりでいいことはひとつもないあるべき客層に届ける工夫をせねばならないそれはストアでは不可能だほかの場に導線をつくらねばならないそのハブとなるのが人格 OverDrive のウェブサイトでしかしそこに集客力はない望む客層に向けて広告を打ち集客した上で配信登録してもらいつねに関心を持ってもらうのがおそらく唯一の道だそれができていないまず効果を出せる水準で広告を出しつづける経済的体力がない次にサブスクライブのノウハウがない極端な話更新通知をメールするだけでもよかろうと思うがそれではつまらないと欲を出してしまうBuddyPress でファンサイト化する案もあったが他人の気配がないからこそ自由に書ける場であることを思えばさあやろうという気にはならないそもそも他人と積極的に関わっていい結果になったためしがない出版物がサイトで目にとまりやすくまた意識してもらいやすくするためには頻繁に出版しつづけることが重要だがあいにく五ヶ月で 470 枚書くのが精いっぱいのありさまだ人格 OverDrive を出版レーベルとして認識してもらえればそれでいいので才能のある他人を集めて連載してもらうのが理想だが他人と関わりたくないし資金もないボランティアベースでうまくいかないのは実証済みだとにかく客層の改善をはからねばならない適切な客筋を見いだせねばならないそれはわかっているのだが手段が見つからない。 『ぼっちの帝国は次の一章を書けば第二幕が終わり第三幕に移る発達障害について書いていることを予定よりも露骨に前面に出しているがこれは他人様から女として共感できないと評されたからだ女性を書いていたつもりはなかったが本物の女性からは七輪の刺青のように見えたらしい黒人でないのを恥じて猫背で演奏したビル・エヴァンスのような心境になりそのような誤解を与えたのはなぜだろうと考えた発達障害のことは健常者には理解できないので人間として共感できないとなじられるのならわかるおそらく実際はそのようなことなのだろうが文化的搾取のように見られたのは何を書いているかが見えにくかったからだろうと考えたそこでこれは女の話なんかじゃないことを明確にした。 「本物ではないひとたちの話だ彼らはあなたがたのようには一生なれないなれなくてもそれなりに愉快にやっていく権利はあるのではないかあなたがたの目障りにならずに密やかにやっていく方策はあるのではないかという話を書いているたぶんこの小説は世の中のさまざまなことからはじき出されたひとびとに読まれなければならないただそのひとたちに届ける手段がない書き出しの頃は上機嫌で毎日書いていたが近頃では書けば書くほど鬱になる書き終えねばならないのはわかっているある種の負債だからだ完済せねばならないあと 160 枚程度だどうせ自分しか読まないのだが


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

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