イシュマエル・ノヴォーク

Ishmael Novok
『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。

箱の中から

 モーテルの前にある電話ボックスの中にはアフロヘアーにトンボのようなサングラス、ブルース・リー風の全身タイツ姿のジョニー・オーロラが笑顔を振りまいている。 「よぅ、みんな元気にしているかい? 今、おれは電話ボックスの中に […]

パカー

 五階建ての階段を最上階まで上ったラスターは息を切らせていた。隣に立つルームメイトで、トラックメイカーとしてはラスターの先輩であるワシリー・スタフスキーが呆れたような顔で 「運動不足だな」  ラスターは深呼吸すると 「ジ […]

ヒーロー / アンチ・ヒーロー

               1960s El paso    朝食を済ませたデニスが噛み煙草を口に放り「馬に乗せてやる」と言った時、エミールは嬉しさでいっぱいだった。いよいよ自分もデニスと同じように馬に乗り、ゆくゆくは […]

ジェイク・キニスキー、文学を語る

 キニスキー氏とコンタクトがとれたことは幸運以外の何物でもなかった。私自身、寝耳に水とか、青天の霹靂とか、そういった仰々しい言葉を並べ立てたくなるような気持ちだった。キニスキー氏は言わずと知れた小説家だが、これまで一切の […]

クリーン・イズ・オーヴァー

 一五フィートのプラスチックレーンの上をポリウレタンに可塑剤を塗ったリアクティブウレタン、一三ポンドのボールが滑るように転がり一〇本のピンを倒した。ボウル・モアー社製ピンセッターが倒れたピンとボールを回収し、ボールは地下 […]

歯科狂騒曲

 ラジオ放送局、『スーパーカリフォルニアエクステンドシドヴィシャス』にやってきたラジオDJ、ジョニー・オーロラの異様さにイースタン・ジェイコブスは目を丸くした。  アフロヘアーにトンボのように大きなサングラス、ブルース・ […]

パーフェクト・デイ

 水色の平屋の周りには背の高い杉が植えられている。家の裏手にはガレージがあり、白いワンボックスカーが停まっているのが見えた。  歩行器を押すチャーネットはネクタイのコブを撫でながら咳払いした。言うべきこと、かつて言うべき […]

汝の母、もしアルバートの妻なりせば

 静まり返った居間、ソファに身を投げ出したアルバートが紙巻煙草を吸っている。ガラス製の灰皿には吸い殻が消化不良を起こしており、低いテーブルの上に灰が落ちている。居間を転がるパディントンのぬいぐるみ、アイアンマンの人形、正 […]

六本足のチャーネット

 玄関の前に置かれた歩行器を見たチャーネットは憎々しげな顔で 「こんなもの必要ない」と言った。ポーリーンは手をヒラつかせて 「折角、物置から引っ張り出してきたんだし。それに、もし転んだりしたら一大事よ?」 「わしは八九歳 […]

フランス組曲

 イトスギの響板に開けられた穴には金属の飾りがはめ込まれている。時計の文字盤みたいな装飾のローズ。ローズの上には真鍮と丹銅の弦が張られている。週に一度は自分で調律する。誰もいない居間で行う調律は作業じゃない。それじゃあ、 […]