イシュマエル・ノヴォーク

Ishmael Novok
『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。

ペリフェラル・ボディーズ

ONE  フィニアス・クランクショウは、光沢あるプラスチックレーンを見つめている。あたりには硬質ラバーのボウルが回転する音や、ボウルが地下を駆ける振動音、歓声と罵声が漂っているものの、クランクショウはまわりのレーンから漂 […]

サタデー・ナイト・インタビュー

 ロサンゼルスのラジオ放送局〈スーパーカリフォルニアエクステンドシドヴィシャス〉より。  真っ赤なネオンサインに〈放送中〉の文字が浮かび上がる。コンソールに腹をのせたイースタン・ジェイコブスは、火の通りをよくするために真 […]

ニューヨークのストア主義者たち

 ジョギングを終えたマデリンは、耳からワイヤレスイヤフォンを引き抜いて小型音楽再生機、アイポッドを机の上に置いた。それから、ゴアテックスのフードつきパーカーを脱いで椅子にかける。彼女の上半身は引き締まっており、ランニング […]

ウォールストリートを走れ

 ラスターはポケットの中で震える携帯電話をとり出した。画面には兄の名前が浮かび上がっていた。不思議に思いながらボタンを押し、口を開く。 「やぁ、兄さん。どうしたの?」 ─ 声を聞きたくなった。どうだ、元気にしているか? […]

太陽の街

               1990s Elpaso  フォード、Fシリーズのピックアップトラックが上下左右に揺れている。助手席に座るリロイは舌を噛まないように口をかたく閉じている。ハンドルを握るエミールが、片手でカウ […]

 ラスターとグルーサックは二人でフルトン通りを歩いている。顔なじみと挨拶を交わしたグルーサックが足を止めたので、手持無沙汰になったラスターはブティックのショーウィンドウを見た。ゼロが二つか三つ、間違えてタイプされたような […]

ムーンチル~アフロヘアーは宇宙空間の夢を見るか

 円形のネオン管の中には窒素やヘリウムが封入されており、管内壁に塗布された無機蛍光体に反応して黄色く発光する。小型の昆虫が羽ばたくような微小なノイズ、ぼんやりした光に吸い寄せられた蛇の目模様の蛾が、ネオン管に体当たりして […]

 1980s Elpaso  ホンキートンクでバーボンを半分ほど空にしたエミールは頭を振った。店内にはウィリー・ネルソンの歌う『明るい表通りで』が流れている。エミールはカウボーイハットを一撫ですると、バーテンダーのニック […]

夜を摘む

 真っ青の空を猛禽類が旋回している。マルビンは〈家具、組み立て。一〇ドル〉と書かれたダンボールの切れ端で胸元を扇ぎ、隣に立つウルピオが腕時計を見た。マルビンが「不景気だ。多分、明日も。景気が良くなるような話は、まるでねぇ […]

セントラルパーク・ウェスト

 ラスターとコービー・グルーサックは、カフェで向かい合って腰掛けている。グルーサックはテーブルの上に置かれているチェス盤のポーンを指差し 「ボビー・フィッシャーを知っているか?」と尋ねた。ラスターは下顎に人差し指をあて […]