イシュマエル・ノヴォーク

『ロクス・ソルス』という同人小説サークルで活動しています。それから、ジャズピアノの演奏活動をしています。気が向くと絵を描いたりします。

ウィークエンド

 ハーグレープ通り沿いのメソジスト派教会で行われた禁酒会は二〇時に終わった。円を描くように置かれた椅子から立ち上がったジャコビは会員たちに愛嬌を振りまきながら外に出て、セフィーロに乗り込んだ。  ジャコビはイングルウッド […]

トラック・メイカー

 ラスターとワシリーは二人揃って狭いガラス張りのブースを見つめている。ブースの中でアルトサックスを吹いているのはジャズ・プレイヤーのイツホク・フェルドマン。ラスターがフェルドマンと知り合ったのは、初めてのガールフレンドで […]

ビートボックス

 ラスターは五人兄弟の末っ子で、家族全員から可愛がられた。彼は兄弟の中で唯一、まともに学校に通った。なぜなら、兄たちが毎日、口を揃えるように 「おれみたいになるな」と言い続けたから。兄たちがストリートで有名だったことから […]

デッドマンズ・ナイト~サタデー・ナイト・サタナイト・ショー

 モーテルでシャワーを浴びたデッドマンはぬるま湯を洗顔タオルで拭き取ってベッドに腰掛けた。デッドマンが自身を〈死んだ男〉と名乗るようになったのは三年前に事業に失敗して債権者に追われる日々から逃れるために自動車に乗り込んだ […]

ブローティガンの隣人

 ソファの上でうたた寝をしていたアーバイン・マッカムスは目覚めるなり、すっかり泡が消えたビールの残りを飲み干した。つけっぱなしのテレビ、ブラウン管の中では何度目の再放送か権利者ですら定かでないメロドラマが映し出されている […]

ローン・スター

 へし折った生木で焚火をかき混ぜると苦し紛れに火の粉が飛び出した。バーリングが火の粉を目で追う。中空を舞った火の粉が黒ずみ、哀れな塵が土くれの上に寝転がった。薮が揺れ、背中にショットガンを背負ったラフ・ベルがあらわれた。 […]

カウチ・ポテト

多くの人が触れ合うことを避けている。

ピンボールタッチ

 ONE  ボウル・モア社製ピンセッターが等間隔でピンを並べた。すべてのピンは一五〇〇グラムで発注されたが、長年、油が塗られたボウルに小突き回された結果、おおよそ五〇から八〇グラムほど軽くなっている。ファウルラインの上で […]

ソフィート

 前略  この度、わが協会は一八七九年に発足以来の道徳的信念に基づき『コイディシュ・ブッフ』を〈ボストンでは禁止〉とさせていただきます。  詳細につきましては、わが協会の弁護人、トニー・コムストックに一任させていただいて […]

アリア~イディッシュ語新聞ができるまで

 フォアヴェルツ紙編集デスク。天井には紫煙が滞留し、受話器はひっきりなしに鳴っている。記者たちは代わる代わる現れ、コートはおろか帽子も脱がずに最奥のボリス・ミジェレツキ編集長の部屋に向かい、褒め言葉や怒声を背中に浴びては […]