すべての見えない光
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すべての見えない

ラジオから聞こえる懐かしい声が、若いドイツ兵と盲目の少女の心をつなぐ。ピュリツァー賞受賞作。孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。

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読んだ人:杜 昌彦

すべての見えない光

いま日本で起きつつあることが書かれていて読みすすめるのがつらかった目が見えない娘がひとりで出歩けるように街の模型を制作する父親が登場しますそのための測量をしていた姿を隣人に通報されて彼は逮捕されます法律は助けてくれませんわたしたち日本人はいまそのような社会へ向けて踏み出しました悪人を排除し社会を守るよい変化だと信じて

すでに警察がとある創作者に話をしたという事例が報じられています性犯罪を促す作品だったという理由です性暴力を礼賛する作品を世に出す側や消費者に届ける手助けをする側それをよいものとして受容する消費者は人間性を疑われてもおかしくありませんしかしそれと権力が口出しをすることは別ですいまこの時点ではまだそのような悪質な出版の話でありわたしやあなたが日常で行っている publishツイートも含まれますには関わりがないかに見えますしかし物事は必ずひとびとの同意を得られやすいところからはじまります

わたしたち人間はひとりひとり違います生まれながらに別々ですし生きていれば異なる経験をしますいわばそのひとだけの事情に生きていて他人からはわかりにくいのです。 「わかりにくい相手を知って理解しようと努めるのがコミュニケーションです出版や読書もそのひとつのかたちです。 「わかりやすさはそれとは逆です自分とは違うものをただ否定します目の前から排除 (「淘汰という言葉で語られることもありますして解決しようとしますそれは暴力です

わかりやすさの先にあるものは何でしょうかわたしたちは自ら喜んで飛びついたことをきっと忘れますその状況をつくりだしたことを認めませんまさか銃口が自分に向けられていたとは夢にも思いませんまして自分で引き金を引いたとは獅子文六はプロパガンダへの協力を依頼してきた軍部に、 「軽いという印象を抱いたことを書いていますその軽さ」 「わかりやすさ」 「受け入れやすさにわたしたちは侵蝕されていませんかわたしたちの多くがこの変化をよいことだと信じている事実が何より怖ろしいです

(2017年06月15日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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アンソニー・ドーア
1973年10月23日 -

『シェル・コレクター』(2002)でO・ヘンリー賞、B&Nディスカバー賞、ローマ賞、ニューヨーク公共図書館ヤング・ライオン賞。『メモリー・ウォール』でストーリー賞を受賞。『すべての見えない光』で2015年度のピュリツァー賞を受賞。

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