英雄なんかどこにもいない
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英雄なんかどこにもいない

ブコウスキーのすべてが濃密につまった奇跡の一冊。つねに社会を挑発し、不穏なまでに暴力的で、あらゆることを嘲り、当然ながらおそろしく不敬。しかし、それはいっぽうで恐怖や孤独あるいはコンプレックスを抱えながら生きていくひとつの術でもあった。あらゆる小さなものたちへの愛を忘れずに生きたアウトローが私たちに遺した反骨と慈愛にみちた悲しくも美しい珠玉の39編。

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著者: チャールズ・ブコウスキー

(1920年8月16日 - 1994年3月9日)米国の作家。二歳でドイツから米国へ移住。大学離籍後、さまざまな職業を経て’52年から’70年まで郵便局に勤務しながら創作を続ける。ブラックスパロウ・プレスのジョン・マーティンと出会い、執筆に専念。白血病で亡くなるまで50冊に及ぶ詩集や小説を発表した。

2020.
08.27Thu

英雄なんかどこにもいない

ブコウスキーはいろんなひとが訳しているけれどやっぱり中川さんのが好きだ。ただ彼はBUKをブクと訳すんだよな。反吐ピュークみたいなビュークですよ奥さん、と照れくさそうに話すBUKの映像を見たことがあるんだが……。ブコウスキーが書く話の大半はZINEやリトルプレスの界隈についてだ。それが読者層だったからなのだろう。そういう書き方、出版、読み方が現代の日本にもあっていいはずだ。なかったのは日本語を打ち出して印刷するには文字数が多すぎて金がかかるからだ。WordPressやMastodonはそうしたものを実現する手段となりうるように思うのだけれど、そういえばDTPってどうだったんだろう。理屈からいえばMacで書いて編集し、レーザープリンタで印刷して、あとはどうにかして製本すりゃよかったじゃないか。そのようにして流通した地下出版はあったのだろうか。あったのかもしれないけれど、そういう場所からブコウスキーのようなふてぶてしい作家が出てきた話は聞かない。日本でいうところのZINEやリトルプレスはお洒落な小冊子で交流する文化でしかない。もしくは逆に『球根栽培法』や『腹腹時計』 のような政治を口実としたサイコパスの手段でしかない。そんな場所から本物の作家が出てくるはずがない。そんなことを考えながら、ちびちびと読みすすめたが若い頃のように読書に身が入らない。憧れの作家だったけれどこの歳になって読むと大人の女性に相手にされずアカデミックな成功者や金持の子息へのコンプレックスでくだを巻くだけの、ただのめんどくさいおっさんにしか見えなくなった。狭い界隈の読者に向けて書かれた文章が多く収録されているせいもあるかもしれない。やはりこれまで未収録・未公開だったのには理由があるような気がする。おもしろいといえばおもしろいけれど、あんまり堂々と人前に出すようなものでもないようだ。世間知らずの若いファンに性的奉仕を無理強いする場面にはBUKならぬPUKEが出そうになった。そこにはぞっとさせられる生々しさがあり、冷水をぶっかけられたオチはとってつけたような感じがする。『くそったれ!少年時代』や『詩人と女たち』といった不朽の名作にはだれがどうがんばったって届きようもないが、『エロ老人日記』のような雑文はわたしうへさんにとっくに追い越されているかに感じる。たしかにおれらはあんたのフォロワーにすぎないかもしれない。でもさ爺さん、あんた死んじゃったじゃないか。白血病なんかにかかってさ。Don’t try, just do it、そうかもしれないけれど、死んじゃ元も子もないんだよ。遺されたおれらはあんたを軽々と越えてみせる。死んじまったのを後悔させてやろうじゃないか。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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