星の時
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星の

地方からリオのスラム街にやってきた、コーラとホットドッグが好きな天涯孤独のタイピストは、自分が不幸であることを知らなかった——。「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」による、ある女への大いなる祈りの物語。

23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠が生んだ奇跡の文学。

「20世紀のもっとも謎めいた作家のひとり」(オルハン・パムク)
「カフカやジョイスと同じ正殿に属する」(エドマンド・ホワイト)
「オブライエン、ボルヘス、ペソアと並ぶ20世紀の隠れた天才」(コルム・トビーン)
「ブラジルのヴァージニア・ウルフ」(ウォール・ストリート・ジャーナル)

荒野からやってきた北東部の女・マカベーアの人生を語る、作家のロドリーゴ・S・M。リオのスラム街でタイピストとして暮らし、映画スターに憧れ、コカコーラとホットドッグが好きで、「不幸であることを知らない」ひとりの女の物語は、栄光の瞬間へと導かれてゆく——。


¥2,426
河出書房新社 2021年, Kindle版 113頁
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作者の思考と物語の境界のない散文詩のような小説

読んだ人:一夜文庫

星の時

なんかへんなものを読んだなぁ⋯⋯というのが読後の正直な感想だ

 この小説は書き手の男性作家ロドリーゴ・ S・M が物語を書き始める前の長い長い独白から始まる170 ページまでの本編のうち35 ページくらいまでがこの独白に割かれるその後主人公の少女の日常についてこれまた長い長い描写が続き 北東部の女ノルデスチーナ とだけ呼ばれていた少女の名前が明かされ物語が動き出すのは 78 ページその間にもロドリーゴは度々顔を出しては独白し時には疲れて書くのを中断したりもする

 ストーリーとしてはブラジル北部地方の田舎から首都リオに出てきた身寄りも財産も学もない何も持たない少女に恋人ができて⋯⋯という要約してしまえば三十字以内で終わるようなものだしかし背景にある何も持たないがゆえに自らの不幸を知りもしない少女そんな無数の人々が蠢く世界の底の泥のようなものに沈んだような気持ちになるそして訪れた結末に書かれたひとりひとりの偉大さ。” という言葉にそうした無数の人々をみつめようとする視線を感じる

 私の好みとしては前半部分の物語がはじまるまでの作家の独白がいちばんよかった男性作家ロドリーゴが書いたという形態を取っているがこれはほぼ著者クラリッセ・リスペクトルの独白とイコールだろうもしかしたら小説を表現する上での作為的な何かがあるのではないかと思って読み進めていったがどうもそういう感じはしない書くことへの理由づけ物語を進めることへの迷い自分と似た境遇であろう少女への愛着⋯⋯恐らくここにはクラリッセの思考がそのまま垂れ流されているそれは哲学的といえばそうかもしれないし中二病的といえばそうかもしれない印象的な言葉もいくつもあったしピンとこない部分もあった小説というより長い散文詩のように感じた

 ストーリーを楽しみたくて本を読むタイプの方にはおすすめしない構成も何もなく小説としては全く整っていないだが作者の思考と綴られている物語が作者の脳から流れ出たそのままに近い形で読めるというのは稀有だと思うクラリッセの思考を味わえるという意味では良い作品だろうし書くことに向き合うひとには何か響くものがあるかもしれない

(2022年11月24日)

寝る前の読書を愛する本好き。趣味で一箱古本市に出たり、ツイッターで本をオススメしたりしている。杜作品を読み人格OverDriveに憧れている。
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AUTHOR


クラリッセ・リスペクトール
(1920年12月10日 - 1977年12月9日)

大戦下にブラジルへ移住。43年の初小説でグラッサ・アラニャ賞を受賞。その後英米伊ほか外国生活の末帰国、77年に亡くなるまでをリオで過ごす。著書『GHの受難/家族の絆』ほか。

クラリッセ・リスペクトールの本